金融商品と同時に実物資産に目を向け始めた世界の政府系ファンド(SWF)
(2009年9月18日掲載)

 香港上海バンキング・コーポレーション(HSBC)グローバル・アセット・マネジメントの政府系ファンド(SWF)担当者によれば、現在、世界の政府系ファンドは、キャピタル・ゲインとインカム・ゲインの両方を視野に入れ、金融資産と同時に実物資産に対する投資意欲を強めているようだ。ここで言う実物資産とは、預金や現金といった金融資産に対する家屋、不動産、建造物といった実体のある資産のことを指している。

 政府系ファンドは、貿易や石油やその他商品などの取引から得た収益を原資とするものが多く、世界的には約3兆ドル規模の保有資産を持つとみなされている。世界的な金融恐慌以前には約800億ドルを証券や銀行などの金融資産に投資していた。だが、その数ヶ月後には、これらの資産の価値は経済の低迷から大幅に減少している。

 ドイツ銀行の最新のレポートによれば、2007年から2009年にかけ政府系ファンドの株式ポートフォリオは約45%減少して模様である。投資全体で見ても、ポートフォリオの18%を失ったという。ただし、HSBC社のシンシア・スウィーニー・バーンズ氏は、「以前に比べれば、資源価格の上昇と輸出収益の好転から、2009年後半には政府系ファンド絡みで得た利益は10億ドル規模に上る」と述べている。また同氏は、現在の投資環境について次のように述べている。

2009年第一四半期以降、世界経済の減速のペースは鈍化している。こうした状況下、政府系ファンドは意欲的な投資を続けている。
同時に、政府系ファンドは世界的な低金利という環境下に置かれている。
政府系ファンドは、キャピタル・ゲインと同時に、固定的なインカム・ゲインを得られる不動産やインフラストラクチャーのような実物資産を好んでいる。
巨額の資産総額を持つ政府系ファンドは、通常の民間投資家に比べて長期的な戦略を持って投資に臨むことができる。

 なかでも中国投資有限公司(The China Investment Corp.CIC) の投資意欲は旺盛である。中国投資有限公司は、同国の経済的発展に伴う貿易黒字や安定的な対内直接投資を原資として潤沢な投資資金を保持している。富士通総研の調査によれば、2007年以前までの中国の外貨準備資産は、安全性や流動性を前提に国家外貨管理局が運用責任を持ち、主に米国債に投資してきた。ただし、極端な一極集中投資リスクや為替リスクの高まりから、運用先の多様化を再検討した。その後、2007年9月に資本金2000億ドルの国有政府系ファンドである中国投資有限公司が設立された。

 同ファンドの運用戦略は、1)資本市場のポートフォリオ投資、2)海外のエネルギー・原材料などの戦略投資、3)中国企業の海外M&A戦略への支援、などと公表されており、近年、中国投資有限公司は、日本および新興市場、北米、欧州市場における投資マネージャーを募集し利益最大化に向け動き出している。2008年の年次報告によれば、同ファンドは2009年に予想できる投資機会に対応しうる潤沢な資金を有しているとのことである。

(9月16日、記)
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(著述家 高橋大樹<たかはし・ひろき>)