シンガポールの半導体大手企業の買収を明らかにしたUAEのアドバンスト・テクノロジー・インベストメント(ATIC)
(2009年9月11日掲載)

 UAEのアブダビ政府が100%所有する投資会社であるアドバンスト・テクノロジー・インベストメント(ATIC)は、2009年9月7日、シンガポールの半導体大手企業チャータード・セミコンダクターを総額39億ドルで買収することを明らかにした。アドバンスト・テクノロジー・インベストメント(ATIC)は2009年初にも、アドバンスト・マイクロ・デバイシズ(AMD)と合弁事業グローバルファウンダリーズを設立し、21億ドルを投資して株式の55.6%を取得している。

 尚、アドバンスト・テクノロジー・インベストメント(ATIC)とアドバンスト・マイクロ・デバイシズ(AMD)の関係については、本稿の最後に、参考として掲載した「チップ製造部門を分離してアブダビ政府系投資会社との新合弁会社に事業を移管するアドバンスト・マイクロ・デバイシズ(AMD)」(2008年10月14日掲載)をご参照いただければ幸いです。

 アドバンスト・テクノロジー・インベストメント(ATIC)のワリード・アル・モカッラブ会長は今回の買収について、次のように述べている。

我々は、チャータード・セミコンダクターが我が社の資本及び関連資産を長期的に利用可能となったころで、同社の技量や能力、指導性を次のレベルに引き上げる機会を得たと考える。
アドバンスト・テクノロジー・インベストメント(ATIC)は、チャータード・セミコンダクターの買収によりセミコンダクター業界への投資を拡大している。我が社は既にドレスデン(独)に既存の施設を持つほか、ニューヨークでも別の工場を建設中である。

 アドバンスト・テクノロジー・インベストメント(ATIC)は、グローバルファウンダリーズのダウグ・グローズ最高経営責任者(CEO)がチャータード・セミコンダクターの経営を見ることになるとしている。尚、チャータード・セミコンダクターのChia Song Hwee現最高経営責任者(CEO)は、最高執行責任者(COO)となり、両社の業務統合を担当する。チャータード・セミコンダクターのジャームズ・ノーリング会長は「我が社が申し出を受けた戦略的選択肢を慎重に検討した結果、アドバンスト・テクノロジー・インベストメント(ATIC)からのものが株主にとって最も検討に値すると考えた」(http://www.middle-east-online.com/english/business/?id=34167)と語り、同社として最善の選択をしたことを強調した。


<ご参考>
チップ製造部門を分離してアブダビ政府系投資会社との新合弁会社に事業を移管するアドバンスト・マイクロ・デバイシズ(AMD)
(2008年10月14日掲載)

 米国半導体大手のアドバンスト・マイクロ・デバイス(Advanced Micro Devices、AMD)は、2008年10月7日、ライバルのインテルとの競争の激化するなかチップ製造部門を分離(スピンオフ)してアブダビ政府系投資会社のアブダビ・テクノロジー・インベストメント(Abu Dhabi Technology Investment Company、ATIC)との新合弁会社に事業を移管すると共に、ATICから最大84億ドルの金融支援を受けることを明らかにした。AMDはここに来て、”Asset Light”(資産軽減)、”Asset Smart”(資産整理)との戦略に基づき、負債の大きい製造部門の一部を売却しチップの開発・設計に焦点を当てる経営を指向していた。その背景には、主力商品である超小型演算処理装置(MPU)の販売増を目指してきたものの、インテルとの競争が激しさを増し2008年7月に7四半期連続の赤字計上を余儀なくされたことに加えて、同社の市場シェアが約20%に留まるなど苦戦が続いていることがあった。

 経済多角化に向けた投資機関として新たに設立されていたATICは、AMDからチップ製造部門の大半を購入し”The Foundry Company“を新設する。ATICはこの新会社の運営費用として14億ドルの初期投資を行うほか、新会社の株式の55.6%の取得費用としてAMDに7億ドルを支払う。残る44.4%はAMDが保有する。尚、新会社の取締役はATICとADMが半数ずつ送り込む。さらにATICはADMのドレスデン工場の改修・拡張やニューヨーク州北部に新たに建設する半導体製造工場・開発センターなどに今後5年間で36億ドルから60億ドルを拠出する。またAMDの負債12億ドルも新会社に移管される。このほか、既に2007年11月15日付けでAMDの株式の8.1%を6億2200万ドルで購入しているアブダビの今一つの政府系ファンドのムバダラ開発が、AMD株を3億1400万ドルで追加取得し、出資比率を19.4%に引き上げることも明らかにされた。

 今回の一連の動きにより、AMDのヘクター・ルイズ会長は新会社”The Foundry Company“の会長に就任し、2008年7月から最高経営責任者(CEO)兼社長に就任したダーク・マイヤー氏が今後も同社の経営を見ることになる。また、The Foundry Company“の最高経営責任者(CEO)にはADMの製造部門の責任者であったダグ・ローズが就く。

 ATICのワリード・アル・モカッラブ・アル・ムヘイリ会長は今回のADMとの取引について、「今回の新事業を消化し終えた後に、さらなる拡大を考える」「我が社は何も半導体事業に限定して業務を展開するわけではない」「バイオテクノロジーであれ生命科学であれ、先端製造技術であれば投資して行く」と語り、ATICにとり初の大事業である今回の投資を成功させた上で、次の投資を検討する意向を明らかにした。尚、ワリード・アル・モカッラブ・アル・ムヘイリATIC会長はムバダラ開発社の最高執行責任者(COO)も兼務している。
(10月12日、記)

(9月10日、記)
<関連情報>

2009年5月にUAEのアルジェリアへの投資が400億ドルを超えたことを明らかにしたアブダビ政府【8/28】

オーストリアのベンドルフ・グループと共同で投資会社を設立したアラブ首長国連邦の投資会社アーバル・インベストメンツ【8/25】

ドイツ企業とアルジェリアでの自動車組み立て合弁事業を行うアブダビ政府系のアーバル・インベストメンツ【8/18】

バージン・グループ(英)の宇宙旅行事業に2億8000万ドル投資するアブダビ政府系のアーバル・インベストメンツ【7/31】

チップ製造部門を分離してアブダビ政府系投資会社との新合弁会社に事業を移管するアドバンスト・マイクロ・デバイシズ(AMD)【2008/10/14】

(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)