輸送コスト削減に向け新たなネットワークシステムの構築を開始したGCC
(2009年9月4日掲載)

 アラブ首長国(UAE)経済の専門家であるムハンマド・アル・アスーミ氏によれば、UAEの国営企業であるイチハード鉄道社(Etihad Trains)は、GCC諸国をトルコ経由でヨーロッパ諸国をつなぐことを最終目標とする巨大輸送網を構築するよう指示された。同プロジェクトの主な目的は、輸送コストを軽減することによる経済成長の拡大にあるという。

 GCC諸国の経済活動は世界的にも陸上輸送に大きく依存していることから、コストが経済成長の大きな足かせとなってきた。2008年は特に石油価格が上昇したため、コストが大幅に上昇しており、必然的にGCC諸国経済の圧迫要因となっている。このプロジェクトの構想自体は、GCC諸国の上層部で長く検討されてきていたが、2008年のコスト(石油価格)の上昇を背景に実施への現実味が急速に高まった模様だ。

 同構想は二つのフェーズに分かれている。第一フェーズでは、5年以内に農村地帯と市街地・商業地区をつなげる鉄道ネットワークを作り上げる。第二フェーズでは、アラブ首長国連邦内の7つの首長国を鉄道で結ぶ。ただし、現在は建築資材の価格上昇と世界的な景気の失速感のためスケジュールに若干の遅れが生じている。UAEは鉄道構想の利点として、コスト以外にも、自動車移動に伴う二酸化炭素の排出量を大幅に削減しうる効果があるとしている。加えて、家族から遠く離れて働く労働者が安易且つ安価に地方と往来できるという社会的意義もあるとしている。

 さらに、この鉄道敷設が開始されれば、雇用の創出につながり、結果的に経済活動が活発化する点も指摘されている。以上のほか、製品の輸送コストが下がることによる輸出面での魅力の増大、外国からの輸入コストの低下によるインフレの抑制といった側面も強調されている。

 GCC諸国は、地理的に西洋と東洋の中間地点に位置しているので、鉄道が完成すれば「モノが行き来する場所」として経済的繁栄を享受する可能性も高い。しかし、現時点での問題は関税である。特に、EU諸国におけるGCCからのアルミニウム及び石油化学品に対する輸入関税、或いは中国やインドにおけるアンチダンピング措置を前提とする対GCC輸入制限などが問題点として挙げられる。ただし、GCC諸国は現時点でインドや中国などと議論するのは良策ではないと考えており、長期的な視点での解決策を検討している。

(9月2日、記)
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(著述家 高橋大樹<たかはし・ひろき>)