国際原子力機関(IAEA)の提示した低濃縮ウランの海外移送加工案に修正を求めた模様のイラン
(2009年10月30日掲載)

 国際原子力機関(IAEA)は2009年10月29日、次のような内容の声明を発表し、イランが提示されていた低濃縮ウランの海外移送加工案に回答してきたことを明らかにした。

ムハンマド・エルバラダイ国際原子力機関(IAEA)事務局長は、テヘランの医療用研究炉で使用するためにイランの低濃縮ウランを(海外で)燃料用に製造するとの提案に対するイラン当局の当初の回答(an initial response)を受け取った。
ムハンマド・エルバラダイ国際原子力機関(IAEA)事務局長は、イラン政府及び全当事国と提案が近々合意されるよう協議している。

 伝えられるところでは、イランの回答は、①低濃縮ウランの海外移送を一度に行うのではなく段階的に実施する、②低濃縮ウランの海外移送と同時に、再加工した燃料を受領する、の2点での修正を求めているようだ。IAEAの声明が、わざわざ「提案に対するイラン当局の当初の回答」と述べているのは、こうしたイランの求めを踏まえて一定の協議・交渉が必要になるとの判断によるものと思われる。しかも今回の回答は、イランのソルタニエIAEA担当大使による口頭での回答であったようだ。

 イランの「くせ球」とも言える変化球の回答への米欧の反応は総じて悲観的なものである。何故ならば、米仏露も受け入れを決めたIAEA案は、イランが国内で濃縮した低濃縮ウラン1.5トンの80%の1.2トンを高燃料化するために露仏に移送することで、イラン国内に残る低濃縮ウランの在庫量を極小化する点がポイントであったからだ。これにより、仮にイランが核兵器の製造を決めたとしても必要なウラン量を濃縮するのに1年を要するため、その期間に説得を含めた対応を行う時間的余裕が十分にあるとの計算であった。

 欧州のベテラン外交官はイランの回答を「基本的には拒絶である」(NYタイムズ紙 2009年10月30日)と見る。同外高官は「イランはIAEAが加工した燃料を持ち返ってくるまで、国内で濃縮した低濃縮ウランは全量保有していたいと考えている」「その後で低濃縮ウランの国外移送に応じるといっているのだ」「鍵はイランが低濃縮ウランの事前の海外移送に合意していないという点だ」「これは小さな問題ではない。この点こそが、この取引の核心部分だ」(同上)と分析し、イランの修正要求は提案の基本部分を損なうものなので交渉はこじれるとの見方を示した。

 ウィーン在住の別の西側外交官も、次のように述べ、似たような見方をしている。「仮にイランの姿勢が伝えられるようなものであるならば、IAEAとしてはどうしようもなくなる」「イランの核開発が平和目的であることを示すのを助けようとしたエルバラダイIAEA事務局長の努力を台無しにするものだ」(ロイター通信 2009年10月29日)と。さらに別の西側外交官は「イランは2009年末までにIAEA提案に応じ、その他の核施設に関しても透明性を示さないと厳しい制裁を課せられる危険を犯している」(同上)と警告している。

 但し、イランの英語の衛星放送であるプレスTVは「イランは交渉に含まれる米仏などを信頼していない」「イランはテヘランの研究炉向けの燃料が実際に供給されるとの保証が必要である」「燃料の購入者であるイランが、どの程度の量を購入するのかを決めるべきである」(ロイター通信 2009年10月29日)と伝えており、イラン側としても、必要な時に、必要な量の加工済み燃料が本当に入手できるのか不安を抱えている点を強調している。

 対応の最も注目される米国はIAEAの先の声明発表の数時間後にイアン・ケリー国務省報道官が、「我々はイランから公式の回答を聞く必要がある」「我々はイランからどのような説明を受けたのかを検討することになろう」「イランと交渉しているIAEA、ロシア、フランス、米国は完全に一体である」(AFP通信 2009年10月29日)と述べ、イランの今回の回答を公式とは見ていない姿勢を示唆した。またフランスは「仏米露が完全に支持したIAEA提案に、イランが明確且つ前向きに回答することを望む」(ロイター通信 2009年10月29日)と述べ、イランの真の意図を知ろうとしているためか慎重な言い回しに努めている。

 他方、2009年10月29日、東部のマシャドで演説したイランのアハマディネジャド大統領は次のように述べ意気軒昂である。

イランは固有の核開発の権利を放棄する意図はない。
西側諸国はイランの固有の権利であるウラン濃縮に関して、対立から交流に移行した。
西側は全てを停止せよと言っていたが、今日、彼らは燃料と技術の交換で協力する用意があると言っている。
我が国は核燃料、発電所、技術での協力を歓迎し、協力する用意がある。

(10月30日、記)
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(幹事 畑中 美樹<はたなか・よしき>)