国際原子力機関(IAEA)の提案の回答期限(10月23日)の延期を申し入れたイラン政府
(2009年10月27日掲載)
回答期限の延期を要請したイラン

 イランのソルタニエ・国際原子力機関(IAEA)担当大使は、2009年10月23日、「イランはしっかりと提案内容を検討している」と語り、10月23日とされていたIAEA提案への回答を10月最終週に行う意向を明らかにした。ケリー米国務省報道官は同日、「イランが最終週に前向きな反応をすることを期待する」と語り、延期を受け入れる姿勢を示した。

 こうした中、イラン国内の一部有力者はIAEA提案に批判的な発言を行っており、イラン政府が意見の調整・統一化に手間取っているとの見方も出てきた。例えば、アリ・ラリジャニ・イラン国会議長は、2009年10月25日、「西側諸国はイランを欺く方向に進もうとしており、何かをイランに押し付けようとしている」「西側諸国はイランが濃縮したウランを渡せば燃料化したウランを送ると言っている」「自分はこの二つの間に連関はないと考える」(AFP通信 2009年10月25日)と語り、イラン国内での濃縮分とイランへ輸出する燃料化済分とを切り離して論じるべきと説いている。

 同様に、アル・アエッディン・ボルージェルディ議員も「世界の大国との取引では注意が必要である」(ガルフ・タイムズ紙 2009年10月24日)と発言している。さらに、ヘシュマトラ・ファラハトピシェフ議員は「西側との核取引ではイラン制裁、特に原料ウランの輸入制裁の解除が伴わねばならない」(同上)と述べ、条件付きとするよう求めている。尚、オバマ米大統領は2009年10月24日、サルコジ仏大統領、メドベージェフ露大統領とそれぞれ電話で協議し、IAEA提案への支持を再確認した。


第二濃縮施設の査察を開始した国際原子力機関(IAEA)

 国際原子力機関(IAEA)の査察官4人が2009年10月24日の深夜にテヘラン入りし、翌25日からの三日間の日程でイラン中西部のコム近郊にある第二濃縮施設の査察を開始した。査察官は三日間の査察で、同施設が申告通りに平和目的の施設であるか否かを調べる。特に、設計と現場の施設の状況が合致するか否かを調べるほか、関係者へのヒアリングや環境サンプルの採取なども合わせて行う。

 サレヒ・イラン副大統領兼原子力庁長官は、従来の数倍の処理能力を持つ新型遠心分離機約3000基をこの施設に設置する方針を明らかにしている。設置数ではナタンツの約8000基を大きく下回るものの、高い処理能力を持つだけに設置目的に疑惑の目が注がれている。しかも同施設が軍用基地の地下に設けられ、存在が暴露されるまで建設着手から数年間未申告であったことも軍事用ではないかとの疑念を生んでいる。

 今回、国際原子力機関(IAEA)の査察官4人が現場入りしたことで一定の解明が期待されるものの、存在が明らかになってから1ヶ月以上が過ぎており、その間に不都合なものは撤去されていた可能性も指摘されている。そのため今回の査察でどこまで真相に迫られるかは未知数といえそうだ。


核不拡散・核軍縮会合で接触したイスラエルとイランの代表

 2009年10月22日付のイスラエルのハーレツ紙は、2009年9月29日、30日の両日、エジプトの首都カイロで開催された国際有識者会議の「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)」にイスラエルとイランの代表がそれぞれ出席し接触したと報道した。「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)」は、オーストリアと日本が2008年に発足させた協議の枠組みである。

 同会議にイスラエルから出席したのはメラブ・ザフォリオディズ・イスラエル原子力エネルギー委員会政策・軍縮局長とシュロモ・ベンアミ・イスラエル原子力委員会顧問(元外相)である。他方、イランの出席者はアリ・アスガル・ソルタニエ・国際原子力機関(IAEA)担当大使である。

 イスラエルのヤエル・ドロン・イスラエル原子力委員会報道官は「イスラエルのメラブ・ザフォリオディズ・イスラエル原子力エネルギー委員会政策・軍縮局長とイランのアリ・アスガル・ソルタニエ・国際原子力機関(IAEA)担当大使は会合で発言し双方の主張を拝聴した。しかし、彼らだけで別途会うことはなかった」(ブルームバーグ通信 2009年10月22日)と述べ、単に国際会議でたまたま同席したとの見方を示した。

 但し、同会議の参加者の話によれば、イスラエルのシュロモ・ベンアミ・イスラエル原子力委員会顧問(元外相)とイランのアリ・アスガル・ソルタニエ・国際原子力機関(IAEA)担当大使は同会議で熱い会話を交わしたという。具体的には、イスラエル側の出席者がイランの核開発は軍事目的としたのに対して、イランのソルタニエ・国際原子力機関(IAEA)担当大使は明確に否定したという。逆に、イランのソルタニエ・国際原子力機関(IAEA)担当大使がイスラエルのメラブ・ザフォリオディズ・イスラエル原子力エネルギー委員会政策・軍縮局長に対して、核兵器を持っているのかと質問したところ、メラブ・ザフォリオディズ・イスラエル原子力エネルギー委員会政策・軍縮局長は笑みを浮かべるだけで回答しなかったという。イランの核開発交渉を巡り微妙な時期にさしかかっているだけに、気になる両国代表の接触といえよう。

(10月26日、記)
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<幹事 畑中 美樹(はたなか よしき)>