格付け会社のスタンダード&プアーズによればドバイ首長国の今後3年間の返済額は500億ドル
(2009年10月20日掲載)

<ドバイの今後3年の返済額は500億ドル>


 格付け会社のスタンダード&プアーズが2009年10月15日に発表した報告書は、ドバイ首長国の今後3年間の返済額は同国の国内総生産(GDP)の70%相当の500億ドルと推計している。尚、政府系企業以外の債務を加えたドバイの総債務額は800~900億ドルと推計している。同報告書の要点を整理すれば次のようになる。

ドバイ政府は何社かの政府系企業が債務を予定通り返済できるように緊急金融支援を要請されることになろう。
借り入れが容易であった過去の経済ブーム時とは異なり政府支援が高負担となるので、これまでの数年に比べて資金の受けての厳しい選別が求められよう。
ドバイの政府系企業の中でもドバイ国際金融センター(DIFC)とドバイ・ホールディング・コマーシャル・オペレーションズ・グループ(DHCOG)が次に政府の支援する企業となろう。
ジュベル・アル・フリーゾーン(JAFZ)とDPワールドが政府支援を必要とする可能性も極めて高い。
公的統計がないので推計値が誤っている可能性も相当程度ある。このことが不確実性を増している。
我が社は政府系企業の返済戦略が透明でないことが、不確実性を高めていると見る。
ドバイ政府による政府系企業に対する支援に関しても、政府による具体的保証などではなく仮定や期待に過ぎない。我々はこれがドバイの政府系企業の信用性を弱めていると見る。
債務残高よりも重要であるのは、債務の多くが相対的に短期な点である。

 尚、ここで言うドバイの政府系企業には、DIFCインベストメント、DPワールド、ジュベル・アル・フリーゾーン(JAFZ)、ドバイ多商品センター庁(DMCC),エマール不動産、ドバイ・ホールディング・コマーシャル・オペレーションズ・グループ(DHCOG)などが含まれている。


<子会社の株式売却も検討するドバイ・ワールド>

 債務600億ドルを抱えるドバイ政府の持ち株会社ドバイ・ワールドは、子会社群が債務返済不能に陥るのを回避するために、例えば子会社のナキールの株式を与信者やアブダビ首長国に売却にすることも検討している。またドバイ・ワールドは資産の売却やドバイ政府による金融支援も検討している。後者の場合、アブダビにある中央銀行からの借り入れとなる。但し、こうした対応策は依然議論の段階に留まっている。

 2009年12月に35.2億ドルの債務返済を抱えるナキールの株式の売却は、ドバイ・ワールドにとって与信者を満足させると共に、資産の割引販売やホテル・小売店舗の破産といった事態の回避に資することになろう。またドバイ政府の発行する2度目の100億ドルの債券をUAE中央銀行が購入する案も議論が続いている。アブダビ政府は投資銀行のロスチャイルドやアリックス・パートナーズ、ドイツ銀行といった顧問団の勧告を慎重に検討中である。


<子会社再編・人員整理を行っているドバイ・ワールド>

 ドバイ・ワールドは今後3年間で経費8億ドルを削減することを目指して、子会社の再編と人員の整理を進めている。既に同社は2009年10月15日、全世界の従業員の15%、人数にして12,350人を解雇し7万人体制としている。UAE国内の従業員に関しても、不動産市況の落ち込みを反映するように全体の25%が解雇されている。

 ドバイ・ワールドのスルタン・アフマド・ビン・スレイヤム会長は「各社の再編によって、ドバイ・ワールド・グループは新たな経済状況に対応しうる次の重要な局面に入った」「我々が直面した課題は特殊なものではなかった。ドバイ・ワールドと子会社群は焦点を正しく絞り、世界の新たな現実に対応している」「ドバイ・ワールド・グループは企業再編によって新たな文化環境と依然不確かな未来での繁栄に備えうる状態となった」(ハリージュ・タイムズ紙 2009年10月16日)と述べ、今後の対応に自信を示した。

 ドバイ・ワールドは顧問として雇用した投資銀行のロスチャイルド及びアリックス・パートナーズの助言に基づき、子会社のDPワールドやイスティスマル・ワールド、ドライドックス・ワールド、フリー・ゾーンズ・ワールドなどの再編を進めている。この再編によりナキール不動産は、資産運用部門と不動産部門の二つに集約される。ワールド・ベンチャーズとイスティスマル・ワールド・キャピタル(イスティスマル・ワールドの投資部門)は合併し、イスティスマル・ワールドの取得した資産の運用に特化する。海外不動産開発に専心してきたリミットレスは、サウジアラビア、ヨルダン、ロシア、中国、ベトナムの5事業のみに焦点を当てる。

(10月18日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)