さらなる成長を期待するには規則類の標準化が急務となる今後のイスラム金融
(2009年11月20日掲載)

 イギリスの監査法人BDDが2009年10月に発表した調査報告によると、イスラム金融業界の経営幹部は、イスラム金融が今後3年に亘って10%から20%の成長を遂げると予測している(ロイター電 2009年10月15日)。以下同記事からの抜粋である。同調査報告はイスラム金融界の経営幹部173人からの回答を基にしている。回答者の53%が「10%から20%の成長」を予測し、「22%が20%から30%、あるいはそれ以上の成長」を予測した。「23%が10%までの成長、もしくは全く成長なし」と回答していた。

 イスラム金融の市場規模は約1兆ドル(約90兆円)と推定される。イスラム債“スクーク”の発行が多くを占めている。しかしながら、イスラム金融の成長は足踏み状態である。専門知識の不足と金融商品に適用される基準の統一化の遅れが足かせとなっているからだ。イスラム金融業界は努力して共通ルール作りに務めている。だが現状では、金融商品や契約についてのルールは、国の監督機関や業界の標準化団体、或いは多くの学者からの見解、解釈の寄せ集め状態に過ぎない。“シャリア”と呼ばれるイスラム法の解釈が各地域で相違する場合もあることから、ある法学者が承認した金融商品であっても他の学者が認めないという問題も起きている。このような見解の相違が国境を超えた(クロス・ボーダー)取引を困難にしている。

 バハレーンに本部を置くイスラム金融の会計・監査の標準化を行うイスラム金融機関会計監査機構(AAOIFI)は、業界に共通するガイドラインを定着させるために特別委員会の設置に動き始めた。AAOIFIの現行の標準ルールは、ドバイ国際金融センターなど中東マーケットの幾つかで採用されているが普及は遅れている。モハマッド・ネダール・アルカーAAOIFI事務局長は、イスラム法の解釈の相違が信用面で深刻なダメージを与えていると語る。

 特別委員会のメンバーは、イスラム学者、法律家、監査人、監督機関関係者、銀行家である。2010年から個々の金融商品をふるいにかけ、イスラム法の原則に適っているかどうかを審査する。特別委員会は不適切と思われる金融製品については見直しを督促するが、改善が見られなければ問題を公表する用意もある。BDDがイスラム金融商品についての認識度を調査したところでは、回答のトップは、リーテイル・ローン(個人向けローン)で、最も収益力ある商品として採り上げている。次にイスラム保険制度“タカフル” (相互扶助”を意味するイスラム教徒向けの保険、集めた資金を運用する際には利子を回避するなどイスラム教に沿った保険)がよく知られていた。3番目がイスラム住宅ローン(資本提供者の銀行が不動産を購入し、顧客が支払う賃借料を通じ資本を回収する)で、イスラム債の“スクーク”は4番目であった。

(11月17日、記)
<関連情報>

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(中東問題研究家 江添 久義<えそい・ひさよし>)