湾岸協力会議(GCC)諸国の水不足問題の解決策のモデルとなるシンガポール
(2009年11月17日掲載)

 中東湾岸諸国は、そもそも水資源が乏しい風土の上に、近年の経済成長と人口増によって水不足対策が緊急の課題となりつつある。これら諸国にとっては、似たような状況にあるシンガポールは水問題解決の先駆者としてお手本的存在なろうとしている。シンガポールは、同国にとって困難な問題である水不足に正面から取り組み解決を図ろうとしている。言ってみれば、シンガポールは、世界の水技術のハブになろうとしている。

 そのシンガポールは、熱帯雨林気候に属し、年間を通じて高温・多湿の気候である。面積は僅か704平方キロメートルしかない島国で、国土は埋め立ようにも限界を迎えている。他方、人口は500万人に達している。しかし上水道の普及率は100%で、当然のことながら水道水も世界保健機構(WHO)が規定する飲料水の水質ガイドラインを満たしている。

 貯水池、浄水場、河川、排水システム、下水道システムなどを一括して管理している公共事業庁(PUB: Public Utilities Board)の3Pネットワーク(住民・官民連携局、3P<People、Private、Public sectors>)のヤップ・ケン・グアン部長は、シンガポールの水問題への取組みについて、次のように説明している。湾岸諸国にとって参考となる内容であるので紹介してみよう。

シンガポールの上水道は国内の貯水池、隣国マレーシアからの飲料水の輸入、海水の淡水化、そして“ニューウォーター”の組み合わせで給水されている。“ニューウォーター”とは再生水のことで、廃水を下水道処理場で飲用可能な水準まで高度処理した水のことである。シンガポールには現在4基の下水道処理場があるが、もう1基を2010年までに完成する予定である。海水淡水化プラントも1基ある。
国土面積の半分に相当する貯水池を確保しているが、さらに2011年までに、国土面積の3分の2に拡大する。
水節約を国民に訴える啓発キャンペーンを行っている。具体的には、シャワー時間を1分短くすると9リットル、コカコーラの大ボトル9本分の水の節約になるといった具合である。キャンペーンの成果として、水の無駄使いが1990年の9.5%から2005年には4.7%に激減したと専門家は言う。
関係各部署が業際を越えて既存の河川水の浄化や下水システムの開発に取り組んでいる。
水汚染対策として、船舶の入渠ドックや船舶が航行する海域の塩水の進入を阻止するために水際に水門を設けている。水門はコンクリート製で、深さ水面下数メートルのところに、センサー作動のコンピューターを設けて、人間による監視を行っている。

 そのシンガポールには、ハイフラックス社(Hyflux Ltd. 本社:カランバール)の本社がある。同社は、水処理施設建設から始まって営管理に至るまでの水事業全般について、中国、インド、中東・北アフリカで事業を展開している。同社が、2008年、アルジェリアで日量50万立方メートルの生産能力を持つ世界最大規模のメンブランス方式の海水淡水化プラントを建設したことは良く知られている。因みに、2009年8月19日、わが国の国際協力銀行は、同社と水事業における業務協力を目的とする覚書を締結している。本件は国際協力銀行によるアジア大洋州及び中東・北アフリカ地域での水事業ファイナンス案件であり、ハイフラックス社との協力も視野に入れている。シンガポールは、わが国の水処理業界にとっても重要な役割を演じようとしているというわけである。

(11月15日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)