オバマ米大統領のイラン向けビデオメッセージとハメネイ最高指導者の翌日の演説
(2009年3月24日掲載)

 バラク・オバマ米大統領は、2009年3月20日、イラン暦の新年に当たる2009年3月20日、ネット上でビデオメッセージを公開し対話を呼び掛けた。メッセージは英語で行われたが映像にはペルシャ語の字幕も流された。米国大統領がイランに対話を直接呼びかけたのは、はじめてのことである。翌3月21日、イランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師は、北東部のマシュハドで演説し、米国に行動での変化を求めた。1980年のテヘランの米大使館人質事件を契機にイランと断行してきた米国だが、オバマ政権の誕生以降、イランに対する言動は微妙に変わっている。イラン側の米国への対応も、厳格な路線を保ちつつも是々非々で答えるとの姿勢がうかがわれる。


 オバマ米大統領は、3月20日のビデオメッセージで、概要、以下を伝えた。

私は、(イラン暦の)新年の機会に、イラン国民と指導者に我々が求める未来について分かってもらいたい。
その未来とは、国民間の交流があり、パートナーシップと経済に大きな機会があり、偉大な安全保障と平和のある未来である。
両国の間には過去約30年に亘り深刻な相違があった。
我々は、イランが偉大な文明を持ち、米国と世界がそれを尊敬しているのを知っている。
我が政権は、眼前にあるあらゆる課題に外交を通じて取り組もうとしている。
我が政権は、米国、イラン、国際社会の間の建設的関係を希求している。
我々は、率直で相互尊重に基づく対話を求めたい。
米国はイランが国際社会で相応しい地位を得ることを願うが、それは、テロや武器ではなく平和的行動のみによって得られる。


 他方、ハメネイ最高指導者の演説の要点は、以下の通りであった。

貴方の言う変化とは何か。米国はイラン資産を解放したのか。イラン制裁を解除したのか。シオニスト(イスラエル)への支持をやめたのか。何を変えたのか我々に話して欲しい。言葉のみの変更では十分ではない。
我々は米国の新政権、新大統領を良く知らない。注意深く観察し判断する。
あなた方が態度を変えれば、我々も態度を変えるだろう。


 イラン国内外の専門家は、ハメネイ最高指導者のやや厳しい反応について、現体制の強硬派が自分たちの立場を維持するためには一定程度の反米のレトリックを必要としていたことに加えて、オバマ・メッセージへの対応で保守派と穏健派が分裂することを回避する狙いがあったためと見る。オマバ政権を突然評価することの出来ないイラン現指導層は、米国との緊張関係を和らげつつ、同時に管理された範囲内での米国との対決の構図を維持するとの微妙な舵取りを要求されることになりそうだ。


 ところで、イラン・コミュニティが一大勢力を誇るドバイでは、ガルフ・ニューズ紙(2009年3月21日)が、早速このやり取りを取り上げ、論説(「対話への貴重な機会」)とコラム(「必要な対イラン二層アプローチ」)でそれぞれ次のように述べていた。まず、前者は、「オバマ・メッセージは、両国の建設的対話に貴重な機会を与えた」「今や両国は公式に席につき、諸問題について共通の理解を始めねばならない」「両国は、その後に緊張緩和と信頼醸成への具体策を決めることができよう」と分析し、後者は、「オバマ大統領の歴史的な和解姿勢は、米政策の劇的シフトを示すもののみならず、中東に長期に亘るインプリケーションを残すものである」「しかし、この新たな始まりを越えて成功させるには、ワシントンが率先する二層アプローチが必要になってくる」「一方は、米国が国家としてのイランの重要性を認めることだ」「他方は、パレスチナ問題の解決に向けて動くことだ」と解説している。

(3月22日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)