街頭での抗議デモは鎮静化しつつあるものの保守派内での意見の対立が見えはじめた大統領選挙後のイラン
(2009年6月30日掲載)

 大統領選挙から2週間強が経過するなか、参加者数が大きく減少するなど街頭での抗議デモは鎮静化しつつある。しかし、ラリジャニ国会議長やカリバフ・テヘラン市長がアハマディネジャド大統領を全面的に支持していない模様であるなど、保守派内での意見の対立が見えはじめている。指導層はもっぱら英国批判を行うことで、国民の目を外にそらそうとしていると同時に、対話の可能性の出た米国との軋轢は起こさないよう慎重な言い回しに努めている。以下では、6月25日から28日にかけての主な動きを一覧表に整理することとしたい。


月日 イラン政府側 抗議運動側 外国政府等
6月
25日
アハマディネジャド大統領が南部アサルエで講演し、「内政干渉を止めるべき」とオバマ米大統領を批判した。
有力紙が、大統領選挙後に起きた衝突で、首都テヘランのみでも志願兵バシジの少なくとも8人が死亡したと報じた。
カタールの衛星放送アル・ジャジーラは、ムサビ元首相のウェブサイト(カレメフ)が伝えたとして、イラン大学の教授ら70人が拘束されたと報じた。
改革派系のエタマデメリ紙は、アハマディネジャド大統領の再選祝賀夕食会には、国会議員290人中、105人しか出席しなかったと報じた。
ムサビ元首相は、ウェブサイトで「選挙無効の訴えを取り下げるよう圧力を受けている」「重大な不正が行われた」「合法的且つ冷静な抗議により目的の達成は可能となる」と述べ、戦い続ける考えを明らかにした。
モンタゼリ師はAFP通信に声明を送り、政府のデモ弾圧は革命体制を危うくすると警告した。
26日
保守強硬派のアフマド・ハタミ師は、テヘラン大学での説教で、「全てに見せしめとなるよう司法に対し暴徒を容赦なく厳格に処罰することを求める」と語った。
護憲評議会の報道官が「政界関係者や抗議している候補者の代理人で構成される特別委員会を設置する」と発表した。
イラン学生通信は、首都テヘランを担当するファズリ革命防衛隊司令官が、国民の安寧を乱す試みは失敗したと述べた。
メルケル独首相との会談後の記者会見でオバマ米大統領が、「デモ制圧は言語道断である」「イランとの直接対話や外交に影響の出ることは疑問の余地がない」と述べた。
ミリバンド英外相はG8外相会議後の記者会見で、「混乱で政府は国民を守れなかった」「死傷者の出たことは遺憾である」と述べた。
イタリア北部のトリエステで開かれたG8外相会議が、議長声明の中で、「我々はイラン選挙後の事態を憂慮する」「国民の意思が反映されるようイラン政府が保証することを求める」と表明した。しかし同時に、「イランの主権を全て尊重する」ともしており、イランを必要以上に刺激する文言は回避された。
27日
ラフサンジャニ元大統領が議長を務める最高評議会が声明を発出し、全候補陣営が街頭抗議デモを自制し、不正疑惑を調査中の護憲評議会の決定に従うよう求めた。
イラン国営通信は、ムサビ元首相の側近の出国が禁止されてと伝えた。
ムサビ元首相が、護憲評議会の発表した投票箱の10%を再集計する特別委員会の設置を支持しないことを明らかにした。
28日
ロイター通信ほかは、イラン政府当局が、大統領選挙後の混乱に関与したとして、テヘランの英大使館の現地スタッフ8人を拘束したと伝えた。
ミリバンド英外相は、全く容認できない嫌がらせであり脅迫である。無事に釈放することを望むと述べた。
ソラナEU共通外交・安全保障上級代表が、イランの核問題について早急に多国間会議を再開することを期待していると語った。
出所:各種報道を基にもとめたもの。


 ところで、2009年6月28日、オバマ米大統領の顧問であるデビッド・アクセルロッド氏は、今後のイランとの対話について次のように語った。

米国は今でもEUと共にイランと核問題で話し合いたいと考えている。
我が国はイランの大統領選挙に干渉していないことを明確にしておきたい。争いはイランの指導層と国民によるものである。ただし、アハマディネジャド大統領は米国を名指しすれば関心をそらせると考えているようだ。
政治的な動機のある同大統領の発言に反応したくない。同大統領の対米非難発言は国民を意識したものだ。
我々はイランに報酬を与えるつもりはなく、イランと同席し二つの選択肢を提示しようとしているだけである。一つは、国際社会への復帰であり、今一つは、極めて厳しい結果を招くものだ。
我々はイランの核兵器化を懸念しており、中東の核化は世界の脅威と認識している。
イランは西側と関与するか、或いは、さらなる孤立かの選択に直面している。


 また、スーザン・ライス駐国連・米大使は、2009年6月28日、次のように述べている。

アハマディネジャド大統領は、国民向け西側、特に米国を非難するという戦略に戻っている。
アハマディネジャド大統領による話題を変えようとのるやり方は上手く行かない。理由は、イラン国民が米国は大統領選挙に干渉していなかったのを知っているからだ。
イラン国民に疑問をつけられた正統性の問題は、イランの核兵器開発を防止するとの米国の目標にとって決定的な問題ではない。
イランの核兵器化の防止に向け外交を含むあらゆる手段を行使するのは、米国の国益に適うものである。

(6月29日、記)
<関連情報>

断固たる対応を示唆し抗議デモの鎮静化に向け動き出した最高指導者ハメネイ師を支持するイラン保守強硬派【6/26】

予想外の拡大を見せるイラン大統領選挙後の不正の有無を発端とした一般国民の抗議行動【6/23】

米国とイスラム世界との関係改善を強く呼びかけたオバマ大統領のカイロ大学での演説【6/9】

イランも平和目的の原子力エネルギーには権利のあること認めた米国のオバマ大統領【6/5】

サウス・パルス・ガス田開発事業の資金調達のために123億ドルの債券の発行を計画中のイラン【6/2】

(幹事 畑中美樹<はたなか よしき>)