断固たる対応を示唆し抗議デモの鎮静化に向け動き出した最高指導者ハメネイ師を支持するイラン保守強硬派
(2009年6月26日掲載)

 大統領選挙から2週間弱が経過するなか、最高指導者ハメネイ師を支持するイラン保守強硬派は断固たる対応を示唆し抗議デモの鎮静化に向け動き出している。以下では、6月21日から23日にかけての主な動きを一覧表に整理することとしたい。


月日 イラン政府側 抗議運動側 外国政府等
6月
22日
アリ・シャフロヒ国会司法委員長が、ムサビ元首相を訴追すべきとの考えを明らかにした。
イラン国営英語放送(プレスTV)が、ラリジャニ国会議長が対英関係の見直しを求める文書を国家安全保障委員会に提出したと伝えた。
革命防衛隊系のファルス通信が、地元紙を引用して、6月20日に衝突現場にいた英仏独の5人のスパイを逮捕したと伝えた。
護憲評議会のカドホダイ報道官が、イラン国営テレビで、重大な不正はなかったので選挙のやり直しはないと語った。
落選したカルビ元国会議長が、ウェブ上で声明を出し、
①再集計で時間を無駄にせず再選挙を行うべきである、
②25日に、抗議デモで死亡した市民の追悼式典を開く、と述べた。
ロイター通信等が、デモ参加者の50~60人が逮捕された模様と伝えた。
国連事務総長が声明を発表し、双方が対話と法により問題を解決するよう呼びかけた。
23日
イラン国営テレビが、護憲評議会は改革派候補による選挙無効の訴えを却下したと報じた。
イラン国営テレビが、駐英イラン大使の一時的召還を決定したと伝えた。
イラン国営通信が、次期大統領は7月26日~8月19日の間に議会に対して就任の宣誓を行う予定と伝えた。
革命防衛隊がウェブサイトを通じて、違法なデモ参加者との対決をためらわず、断固たる対応を取ると警告した。
最高指導者ハメネイ師が、護憲評議会の審査の5日間の延期に同意した。
テヘラン・タイムズ紙が、保守派のシャフルディ司法長官が、不法行為は民主主義を損ねると発言したと報じた。
護憲評議会に選挙の異議を申し立てていた候補者の一人であるレザイ元革命防衛隊最高司令官が、選挙より現下の情勢に関心を払うべきと述べ申し立てを取り下げた。
ムサビ元首相が、前日の6月22日、聖地コムを訪れ高位の宗教指導者と意見交換した。ウェブサイトが明らかにした。
ギブス米大統領報道官が、NBCテレビで、①抗議行動で変化が始まった、②オバマ大統領はゼネストを支持しないだろう、と語った。
ロイター通信等が、イランで取材活動中のワシントン・タイムズ紙の記者(ギリシャ人)が当局に逮捕されたと伝えた。
ブラウン英首相が、イラン人外交官2人に国外退去を命じた。
オバマ米大統領が、ホワイトハウスで記者会見し、米国と国際社会は脅しや暴力、拘束等に驚き怒っており、不公正な行為を強く非難すると述べた。
ローマを訪問したネタニヤフ・イスラエル首相が、ベルルスコーニ首相との会談後の共同記者会見で、イランは政府が国民を弾圧していると批判した。
24日
最高指導者ハメネイ師が、国会議員への演説で、「体制指導部も国家も如何なる犠牲を払っても圧力に屈しない」と述べ、ムサビ元首相らに要求を拒否する意向を改めて表明した。
マンスーリ内相が、ムサビ支持の暴徒がCIAやムジャヒディン・ハルク(MKO、イスラム人民戦士機構)から資金支援を受けていたと非難した。
イラン学生通信が、モッタキ外相は対英外交関係縮小を検討中と伝えた。
イラン国営通信が、イラン人女性ナダさん銃撃はムジャヒディン・ハルク(MKO、イスラム人民戦士機構)によるものと伝えた。
イランの複数の消息筋が、6月12日の大統領選挙の数週間前に、オバマ米大統領がハメネイ師に親書を送っていたことを明らかにした。
ムサビ元首相の妻女であるザハラ・ラフナバル女史が、ウェブサイトで、国民の権利の擁護のために正当な抗議を続けるのが自分の責務と語り、抗議行動を続ける意思を表明した。
改革派のカルビ元国会議長の陣営が、6月25日に予定していた犠牲者追悼集会が当局の許可を得られなかったので翌週に延期すると発表した。
ギブス米大統領報道官が、7月4日の独立記念日の在外公館で開くパーティーへのイラン外交官の招待を取り消したことを明らかにした。
出所:各種報道を基にもとめたもの。


 尚、欧州をベースに執筆活動を行っているイラン人ジャーナリストのアミール・タヘリ氏は、2009年6月23日付けのガルフ・ニューズ紙に、「イランではありそうにない内戦」と題した興味深い一文を掲載した。最後に簡単に紹介することとしたい。


 まず、同氏は、イランの2500年超の歴史でも内戦と呼ばれるものが起きたのは、紀元前5世紀、紀元後6世紀、1911年の3回だけであったとした上で、その理由を次のように説明した。


 「権力闘争が発展すると、イラン人はどちら側が勝利するか見極めることに長けている」「ひとたび、どちら側が勝利するか見極めると、彼らは皆、そちら側につく」「内戦を引き起こそうと反対側に残る者などいない」「呼びたければ『日和見主義』と呼べばよい。しかし、これが典型的なイラン政治である」。


 そして最後に同氏は、「自分としては、負けつつあると悟った側が、それを否定せず、長期の血生臭い争いに訴えることなく従うことを望みたい」と結んでいる。

(6月24日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)