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| (2009年6月23日掲載) |
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結果発表(13日)からから不正調査の指示(15日)へ イランのマハスーリ内相は6月13日午後、前日行われた大統領選挙の最終開票結果を発表し、投票率62.63%を獲得した保守強硬派のアハマディネジャド大統領が、同33.75%であった改革派のムサビ元首相を抑えて再選されたことを明らかにした(表1ご参照)。尚、残る二人の候補者の投票率は、レザイ革命防衛隊元司令官が1.73%、カルビ元国会議長が0.85%という極めて低率であった。 表1 イラン大統領選挙の各候補の獲得投票数
最高指導者のハメネイ師は内務省による結果発表の行われた6月13日、大統領の再選を歓迎すると共に、すべての国民に選挙結果を尊重するよう求めた。この時点では、国民の一部が結果に不満を抱くとしても大きな事態になるとはないと見ていなかったふしが窺える。 しかし、事前の予想とは異なる大差での敗北という結果をつきつけられムサビ元首相は、選挙で目に余る不正行為があったとの抗議声明を発表した。このムサビ元首相の抗議声明を待っていたかのように、改革派が同日から街頭での激しい抗議デモを展開したことから事態は当局も予想していなかった大騒動へと発展していった。 当初は事態の推移を静観していたハメネイ師も、連日、街頭での激しい抗議行動が続いたことから、投票日から三日後の6月15日、憲法擁護評議会に不正の有無の調査を命じる姿勢へと戦術の転換を図った。しかし、不満を覚えた誰もが、調査の指示には政治的計算があり、反アハマディネジャド感情が下火になり国民の怒りが収まるのを待つための時間稼ぎと見た。 抗議デモの継続とメディア取締りの強化(16日~18日) 予想されたように、護憲評議会による調査の発表では不正の解明を求める改革派の抗議運動は収まらなかった。抗議デモがイスファハンやシラーズなどの地方都市に拡大したばかりでなく、取り締まり側によるデモ隊への発砲で死亡者が生まれてしまった。 憲法擁護評議会は新たな展開を受けて6月16日、投票の一部を再集計する用意があることを明らかにしたものの、再選挙を要求する改革派は妥協しなかった。その後も、6月17日、18日と抗議活動は続き、それと共に治安当局との衝突による死傷者数も増加していった。 イランでの抗議活動を憂慮した欧米諸国が相次いでイラン政府に懸念を表明したことから、イラン外務省は6月17日、欧米の内政干渉に対する非難を開始し、各国大使が呼ばれて抗議を受けることとなった。またイラン外務省は、一部の外国メディアが非合法の抗議集会を支持し騒乱を起こした者たちを代弁しているとの声明を発表し、報道内容に注意するよう促した。 金融礼拝でのハメネイ最高指導者の警告(19日)とその後の推移 護憲評議会による一部票の再集計により時間を稼ぎつつ事態を鎮静化することを目指していた最高指導者のハメネイ師であったが、改革派の抗議行動が益々拡大の傾向を辿ったことから、6月19日の金曜礼拝の場を使って、一転厳しい警告を与える戦術へと再転換した。 同日の金曜礼拝でハメネイ師は「アハマディネジャド大統領は2400万票を集めて選出された」「イランの選挙に不正はありえない」「自分の主張はアハマディネジャド大統領のものに近い」「改革派の抗議活動は多くの問題を起こしている」「抗議は法律の範囲内で行うべきである」「改革派は抗議活動による結果に責任をもたねばならない」等々と述べ、改革派が抗議活動を続けるならば強硬策を取る可能性もあることを示唆した。 金曜礼拝での最高指導者ハメネイ師の厳しい発言を受けたムサビ元首相は、同日、改めて支持者の前で演説し「殉教者になる覚悟はある」と述べて再選挙の実施要求に向けた決意を表明した。さらに選挙戦でムサビ元首相を支援したハタミ前大統領が6月21日、「国民による文明的な方法での要求の表現を阻止すれば危険な結果を生む」と当局の対応を批判するなど、対決姿勢に変化は見られない。 舞台裏で続く落とし所を探る駆け引き? 元来、ハメネイ最高指導者は政治的現実主義者であり、過去にも、「最高指導者としての自己の存続」と「聖職者の統治する制度の堅持」という主要目標を確かなものとするために譲歩を行っている。ムサビ前首相がラフサンジャニ元大統領の支持を得ていることから、ハメネイ師も改革派の主張を完全に無視することは出来なくなっている。因みに、アフマディネジャド大統領に批判的なラフサンジャニ師は、2007年以降、形式的とはいえ最高指導者の更迭を行いうる専門家会議議長の職にあるほか、護憲評議会の審査も行う公益評議会議長も兼務している。 今回の大統領選挙に際してハメネイ師とラフサンジャニ師は、アフマディネジャド大統領の評価を巡って公に対立していた。また、ハメネイ師はラフサンジャニ師を最高指導者としての自分の地位の後を狙う脅威者と見ているようだ。 イラン国内では、ラフサンジャニ師がハメネイ師の追放に動くとは見られていないが、現在舞台裏で激しい駆け引きが繰り広げられているのは確かである。最終的にはここで取引がなされる可能性が高い。既にハメネイ・ムサビ会談やラフサンジャニ・有力聖職者会談などが行われている。 抗議行動の行方 今回の抗議行動は、イラン・イスラム共和国の誕生後の30年の歴史で最も激しいものであり、しかも学生や若者のみならず女性を含む一般国民が多数参加している点が注目される。イランの指導層は、国民が不満を爆発させた理由を熟考せねばならないだろう。何故ならば、彼らは単に選挙の不正に憤ったのではなく、国家の統治のあり方や向かおうとしている方向に強い不満を抱いていると考えられるからだ。その意味では、今回の騒乱は、ハメネイ師を頂点とする現体制にとって危険を知らせるシグナルとなったはずである。 問題は選挙の不正を求める抗議運動が体制の変革を求める運動にまで発展するのか否かである。この点で覚えておかねばならないのは、ムサビ元首相も、支持するハタミ前大統領も、背後に控えるラフサンジャニ元大統領も、何れもイスラム体制の転覆は全く望んでいないことである。 その意味では今の抗議活動が体制の転覆運動につながる可能性は低いと思われる。ポイントは学生や女性、一般市民と共に、労働者階級がどこまでこの運動を支持しているのかである。労働者の広範な参画があるのであれば街頭での抗議活動がゼネストに変貌し、国家機能を麻痺させることも出来るからだ。 要は、学生中心の天安門で終わるのか、あるいは労働者を巻き込むグダニスクとなりムサビ元首相がワレサ議長となるのか否か。現実主義者で保守派の ハメネイ師と元来左翼主義者ながら改革派に名を連ねているムサビ元首相の次の一手に注目が集まっている。 <注:大統領選挙の不正疑惑のポイント> 護憲評議会には500件近い不正報告が上がっているようだが、報道等で確認できる不正の疑いを持たれる動き等は凡そ次のように整理できよう。
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| (6月22日、記) |
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| <関連情報> ●米国とイスラム世界との関係改善を強く呼びかけたオバマ大統領のカイロ大学での演説【6/9】 ●イランも平和目的の原子力エネルギーには権利のあること認めた米国のオバマ大統領【6/5】 ●サウス・パルス・ガス田開発事業の資金調達のために123億ドルの債券の発行を計画中のイラン【6/2】 ●6カ国との核開発交渉は6月12日の大統領選挙後であると語ったアハマディネジャド・イラン大統領【5/26】 ●中東和平やイラン問題等で意見交換したネタニヤフ・イスラエル首相とオバマ米大統領とのホワイトハウスでの首脳会談【5/22】 |
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| (幹事 畑中 美樹<はたなか・よしき>) |