若年層での糖尿病が深刻化しているため食生活を見直すキャンペーンを積極展開するGCC諸国
(2009年6月5日掲載)

 GCC諸国では、肥満、糖尿病に直結する「健康リスクと食生活」を見直す啓発プログラムを相次いで立ち上げている。豊富な石油収入を背景として豊かになったGCC諸国では、生活習慣病、特に肥満と糖尿病人口が増加している。危機感を募らした政府は、これまで砂漠の民を虜(とりこ)にしてきた高カロリー食品を槍玉に挙げて行動を起こし始めている。

 ドバイ病院の院長も務める首長国糖尿病学会のアブデルラザック・アル・マダニ会長は、肥満人口の増大は、石油収入の急増による急激な経済成長が背景にあると言う。GCC諸国でも昔は荒々しく活動的なライフ・スタイルであったのだが、現在ではデスク・ワークが中心の生活となっている。おまけに世界各国の料理を提供するレストランが開店し、高カロリーのファースト・フードも広まったことから10代の若い子供たちの間にも肥満が急増している。5歳から16歳の若者でさえ糖尿病に蝕まれているという。以下では、GCC各国の現状を素描してみよう。


UAE
 最近発表された公式の数字では、成人の70%、子供の12%が体重オーバーで、その内、5分の1は肥満になるリスクがあるという。また、糖尿病患者の8%が心臓発作で死亡している。ちなみに、UAEでは心臓発作が交通事故に次ぐ死亡原因となっている。2005年では人口640万の19.6%が糖尿病患者であり、患者数では世界第2位という。因みに、第一位は、人口が僅か13,000人に過ぎないのに、その30%が糖尿病患者であるという南太平洋の小国ナウル共和国である。

 首長国糖尿病学会のアブデルラザック・アル・マダニ会長は「もし今日同じ調査を行えば、前回の調査より高い数字がでるだろう。現状で2025年には患者数は人口の28%に達すると予測される」(Middle East On-line 2009年4月29日)と述べ警鐘を鳴らしている。尚、UAE保健省の発表では、入院患者の3分の1が糖尿病患者で、その費用は年間7億3,500万ディルハム(約2億ドル)にも上るという。


サウジアラビア
 正確な数字は入手できないが、サウジ国営通信は2009年4月、30歳以上の人口の25%が糖尿病だと伝えていた。リヤドの脚部(足)専門外科医のアブダラジズ・アル・ガナス医師が、2009年3月に、「サウジアラビの首都リヤドだけでも糖尿病足壊疽による足の切断が毎月90人余りに達している」「今では30歳の若い人でも糖尿病のために足を切断するために受診にくるほどである」(同上)と語っていた。


カタール
 糖尿病人口は15%である。ハマッド病院の小児科医であるマリアム・アル・アリ医師によれば、14歳以下の子供の糖尿病患者数は、10年前は7%に過ぎなかったが2007年には35%にも達している。


オマーン
 糖尿病人口は13%となっている。


バハレーン
 糖尿病人口は14.3%である。バハレーン保健省の高官であるマリアム・アル・ジャァヘマ氏によれば、2006年に1769人を対象に行ったサンプリング調査では女性の16.8%、男性の11.7%が糖尿病であった。


クウェート
 糖尿病撲滅キャンペーンの代表を務めるアハマド・アル・シャッティ氏によると、国民の4人に1人が糖尿病であると言う。


 自国の肥満者が急増していることから、UAE保健省は、肥満と糖尿病の健康リスクを啓発する全国的キャンペーンを展開することを決めている。また、UAE保健省は国連の子供基金(UNICEF)と協力して子供の肥満対策にも乗り出している。このキャンペーンでは、生徒にスポーツとダイエットを奨励している教育省との協力による子供の健康を考えた食生活に関する母親教育プログラムも含まれている。

 さらに、アブダビの学校の多くでは疾走競技会が開かれるようになってきた。学校によっては食堂でジャンク・フードの販売を取りやめたとの報告も上がってきている。その他GCC諸国でも、ショッピング・モールに健康チェックのブースを設けたり、健康問題を扱うテレビ番組を増やしたり、或いは教育セミナーを開いたりと同じようなキャンペーンが始められている。

(6月3日、記)
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(中東問題研究家 江添久義<えそい・ひさよし>)