サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)の訪問で対米投資の継続や米ドル連動性の維持を求めたガイトナー米財務長官
(2009年7月28日掲載)

 2009年7月14日にサウジアラビアのジッダ、翌15日にアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビを訪問したガイトナー米財務長官は、両国政府高官との協議で対米投資の継続や米ドル連動性の維持を求めたほか、両都市のビジネスマンとの懇談会では今後の米経済や米ドルについてオバマ政権が適切な政策を実行しているので懸念はないことを訴えた。以下では、同財務長官の両都市訪問中の報道振りを紹介することとしたい。


サウジアラビアでは対米投資を要請
 ティモシー・ガイトナー米財務長官は2009年7月14日、サウジアラビアにおいて、GCC諸国に対米投資を促すと共に各国の国内投資が世界経済の成長に貢献していることを称賛した。またジッダ商工会議所で行われたサウジ人ビジネスマンとの会合で演説したガイトナー米財務長官は、次のように語り、3年前、ドバイ・ポーツ・ワールドの対米投資を阻止しようとしたような安保上の問題は解決された事を強調した。尚、同長官はその後アブドゥラ国王と会談した。

議論を呼んだ2006年初のドバイ・ポーツ・ワールドの投資の一件以降、米政府は国家安全保障を確保しつつ、投資家に明確で透明性のある基準を設定した。
こうした改正は我が国の投資に開放的な政策に不都合をきたすようなものではない。我々は我が国経済の開放性を確約している。
公にされただけでも、GCC諸国がこの事件以降に行った直接投資額は250億ドルに達している。うち110億ドルはSABICによるGEのプラスチック部門の買収案件である。
GCC諸国による国内投資は各国経済及び世界経済を金融危機の影響から浮揚させるのに寄与している。
自分は、世界がまだ、サウジアラビアやGCCが将来の成長の基盤のために行っている野心的な投資規模を正しく評価していないと考える。


UAE政府高官との会談では米経済・米ドルの先行きを保証
 2009年7月15日、UAE政府高官等との一連の会談を行ったティモシー・ガイトナー米財務長官は、米経済や米ドルの先行きについて保証のうえ、次のように語りこれらが投資の障害とはなりえないとの認識を示した。

引き続き強い米ドルを確約するというのが米国の政策である。米ドルは主要な準備通貨であり続ける。

 さらに、米国・UAEビジネス・カウンスルに出席したシェイハ・ルブナ・アル・カシミ外国貿易相とガイトナー財務長官は、中東の教育政策が世界経済の成長を牽引する上で重要なことを強調した。この会合には、UAEからもリーム・アル・ハシャミ国務相、アハメド・アル・サイエグ・マスダル・イニシアチブ会長兼アルダール学院院長、ファハド・サイード・アル・ラクバニ・アブダビ経済開発評議会副委員長など経済・貿易・教育界を代表する人物が10数名参加した。会合では、知識を基盤とする経済創造のビジョン・戦略及び経済開発における女性と若者の役割が議論された。ガイトナー米財務長官は同会合で以下のような発言を行った。尚、事前に一切の質問は受け付けないことが知らされた。

知識を基盤とする経済の創造が必要であると同時に、将来の危機を回避するための世界経済の均衡した成長のための基盤の整備も必要である。
我々は単に金融危機の現下のコストを論ずるのではなく、均衡した世界経済の成長のための基礎を再構築したい。
GCC諸国が米財務省証券の一部を取り崩したり、外貨準備の一部をその他通貨に乗り換えても何ら脅威とは考えない。
世界がリスクについてもっと心配する時に、一般的には米財務省証券の保有を増やしている。それに、今、米ドル投資は増えている。
ドルは主要な準備通貨であり続けるというのが自分の考えであるし、ここアブダビで聞かされた見方でもある。

 また会合の終了後、アル・スウェイディUAE中央銀行総裁が「国際市場に現実的な約束を与えることは極めて重要である」「ガイトナー米財務長官はそれを行った」「我々は常にディルハムを米ドルに連動し続けると言っている」と述べ、UAEが米ドルとの連動性を続けることを示唆した。

 加えて、ガイトナー米財務長官はUAE中央銀行、アブダビ投資庁(ADIA),アブダビ投資評議会(ADIC)の高官たちとも別途協議した。ADIA高官は匿名を条件に、「ガイトナー長官はADIAでは対米投資及びIMFの設定した政府系ファンドの投資基準の遵守の必要性について集中的に議論した」「ガイトナー米財務長官は、我々に米国投資について保証し、米経済と米ドルの強さについて保証した」と述べている。ガイトナー米財務長官は、この点についてサウジアラビアの衛星放送で概要次のように語った。

明らかにしておきたいのは、ドバイ・ポーツ・ワールドの一件後、米国は米国の安全保障に関わるかもしれない外国投資の評価プロセスを一つにまとめ2007年に法律化したことだ。同法は2007年末から有効となっている。
サウジアラビアとUAEでの議論には、石油市場や世界経済を再活性化させるための原油価格の安定化の必要性も含まれていた。
両国は安定性の確保のために透明性が必要なことで同意した。
米国とGCCはエネルギー・商品市場の透明化に共通の利害を有しているので、変動を回避する方法を見出す必要がある。
世界経済の回復の兆候を後押しするのは、GCCにも、その他世界にも有益なことと考える。
サウジアラビアとUAEとの高官との会談では、望ましい原油価格の水準について言及しなかった。
予見しうる将来において米ドルが主要な準備通貨であり続けることを保証する。
制度の基本部分を支えることは世界経済のためになる。我々は常に強い米ドルを約束し続ける。
金融危機の再発を防止するために世界は厳格な金融管理制度を構築する時期である。
我々は金融制度の外側にリスクの抜け道となるポケットの存在を許してきた。


訪問で米国は変化したとのサインを送ったガイトナー財務長官:UAE紙コメント
 2009年7月22日のガルフ・ニューズ紙は、「理論的には、米国は変化したとのサインを送ったガイトナー財務長官」との題名のコメント&分析を掲載した。以下では、要点に絞って紹介したい。

第一のメッセージは、米国が外交投資を暖かく迎え、それが成功するよう支援するというものであった。
第二のメッセージは、ブッシュ前政権に関係することであった。ガイトナー財務長官のシグナルは、米国が変化し、最早自己の意見を他国に押し付けないことを示唆していた。このことは、今回の訪問が、米国を含む世界経済の救済策に関する了解を得るためものであったことを意味している。
第三のメッセージは、世界の準備通貨としての米ドルの重要性を強調するものであった。特に、ロシアと中国が新たな準備通貨の創設を主張し始めただけに重要なメッセージであった。
第四のメッセージは、世界経済が危機から早急に脱出するために、一層の資金の供与を求められている世界の金融機構、つまりIMFと世界銀行に関するものであった。
世界の投資家の信頼を取り戻すために米国の新政権はより強力な保証を行わねばならない。
他方、ガイトナー財務長官の行った米ドルは将来においても強いとのメッセージには疑いが残る。何故ならば、ここのところ米ドルは弱含んでいるのだから。
ただし、ガイトナー財務長官の来訪は一般的にはプラスに受け止められ、オバマ政権の新たなアプローチを反映しているようであった。

(7月26日、記)
<関連情報>

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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)