イタリアのラクイラで開催された主要8カ国(G8)首脳会議(ラクイラ・サミット)とイラン・リビア
(2009年7月14日掲載)

「世界経済」「温室効果ガス削減」「アフリカ・食料問題」


 イタリアのラクイラで2009年7月8日から開催されていた主要8カ国(G8)首脳会議(ラクイラ・サミット)は、7月10日午後、ベルルスコーニ首相が議長総括を発表し、三日間の日程を全て終え閉幕した。注目された「世界経済」では景気認識に関する前向きな表現は見送られた。「温室効果ガスの削減」の問題では、G8は2050年までに先進国全体として削減するという長期目標で何とか合意したものの、新興国も加えた主要経済圏フォーラム(MEF)の首脳宣言では排出削減の数値目標を明らかに出来なかった。アフリカ支援や食料問題については、G8に中国、インドなどの新興国、さらにアフリカ6カ国を加えた27カ国首脳による拡大会合が開かれ、アフリカの貧困国の食料増産を支援するために今後3年間で200億ドル(約1兆8500億円)を援助する「ラクイラ共同声明」が採択された。


イラン問題への姿勢

 イランの核開発問題に関しては、G8が2009年7月8日に採択した政治宣言の冒頭で取り上げられ強い懸念が表明され、その中で国連決議の求めるウラン濃縮の停止を遅滞なく実現するよう促すと共に、「G8首脳はイランがウラン濃縮の停止の要請を遵守しているか否か2009年9月に米国のピッツバーグで開かれるG20首脳会議まで時間を置く」と述べ、それまでに対応を決めるようイランに迫っている。オバマ米大統領もG8サミット終了後の記者会見で、「いつまでも何もしないわけにはいかない」と述べ、9月24日、25日に開かれるG20首脳会議までにイランが要求に答えない場合、新たな制裁措置を検討することを示唆した。

 G8サミットに先立ってモスクワを訪問しメドベージェフ・ロシア大統領と会談したオバマ米大統領は、2009年7月7日に高等経済大学(モスクワ)で行った講演で、「イランが核兵器の開発を放棄すれば、米国が進めようとしているミサイル防衛(MD)計画も不必要になる」と発言し、MD計画をロシアのイランの核開発への姿勢と絡めて考えることを明らかにした。この件では、米ホワイトハウスのセイモア大量破壊兵器・安全保障・軍備管理調整官も2009年7月9日、ロンドンの国際戦略研究所(IISS)で講演し、①イランの核開発問題で2009年中に著しい進展がなければ制裁強化を行う、②米露が戦略核問題で合意すれば、ロシアがイラン問題で米国と協調する可能性が高まると語り、ロシアとの核軍縮交渉にイランの核開発問題を絡める姿勢を示唆した。


その後のイラン国内の動向

 ところでイラン国内では、アハマディネジャド大統領が2009年7月7日夜、テレビ演説で、2期目の政策では経済面、文化・芸術面で自由を拡大のうえ国民の権利を尊重することを明らかにし国民の不満を取り込む姿勢を示した。他方、改革派系の新聞は2009年7月5日、フセイン・ムサビ元首相が自らの目的を達成するために政党を結成するであろうと報じた。ムサビ元首相自身もウェブサイトで「組織を創設し支持者たちと組織的・計画的に行動したい」と表明している。こうしたなか保守強硬派で知られる護憲評議会委員のカシャニ師は、2009年7月10日、「先の大統領選挙への全立候補者は国家のために働いてきた」「4000万人の投票者の中に敵は存在しない」と述べ国民に和解を呼びかけている。


イランのG8サミットへの対応

 イランのモッタキ外相は2009年7月12日、記者会見で、G8サミットでイランの核開発問題が取り上げられ、9月を目途にウラン濃縮の停止の要請に応えるのか否かの姿勢を示すよう求められたことに関して次のように発言した。

我が国はG8から何らメッセージを受け取っていない
しかし、我々が知り得たニュースによれば、G8は異なる問題に関して幾つかの分野で意見の一致には至らない異なる見解を持っているようである。
イランには西側諸国向けの新たな政治・治安・国際問題に関する包括提案がある。
この包括案は西側諸国にとって交渉の良い基礎となろう。包括案には、政治・治安・国際問題に関するイランの姿勢が含まれている。


カダフィ大佐とオバマ米大統領・ブラウン英首相

 アフリカ連合(AU)議長の資格で今回のG8サミットに招待されたリビアのカダフィ大佐は、オバマ米大統領、ブラウン英首相と言葉を交わす機会を得た。オバマ米大統領とは、イタリアのナポロターノ大統領の主催する夕食会の前の記念撮影のために整列していた際に握手をして言葉を交わした。カダフィ大佐と米国の大統領との初の出会いとなった。ホワイトハウスの高官デニス・マックドナウ氏は「両国関係は既に復活している」「オバマ大統領は機会があれば、いかなる国家指導者とも握手する。それが大統領のやり方だ」(http://www.middle-east-online.com/english/libya/?id=33105)とコメントし、特に何か意味のある握手ではないと説明している。

 カダフィ大佐はブラウン英首相とはG8サミット最終日の2009年7月10日、約45分間に亘り会談した。ブラウン首相は会談後、記者団に、リビアの大量破壊兵器の放棄は北朝鮮やイランには良い教訓となるはずだと語った。同首相の主な発言内容は次のようなものであった。

リビアと南アフリカは核開発計画を放棄した。
我々が核拡散、特に北朝鮮とイランの核開発問題を懸念している時に、核兵器の保有国となったかもしれないリビアと南アフリカがその機会を放棄したのは重要である。
これは、核保有国と非保有国の間に取引を成立させねばならないという良い教訓である。
核兵器保有国になるかもしれない国家がリビアのようにそれを非難すれば、リビアのように国際社会の一員になりうるし、民生用の原子力発電所を持つことが出来る。

(7月12日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)