原油価格低迷の影響はあるもののサウジ経済は底堅いと見る国際通貨基金(IMF)
(2009年8月21日掲載)

 サウジアラビアの経済に関する国際通貨基金(IMF)の調査報告書が2009年8月18日、明らかにされた。同報告書は、サウジアラビアの経済が底堅く銀行部門も世界金融危機の荒波を乗り切ったと分析している。以下では、同報告書の要点を列挙してみよう。

サウジアラビアの2009年のGDP成長率は原油の減産から▲1%に後退するものの、将来の経済見通しは総じて明るい。
経済活動のうち雇用創出効果を見る上で重要な2009年の非石油GDPは、拡大的な財政に支えられ3.3%と見込まれる。しかしながら、低産油量のためにGDP全体としては1999年以降で初のマイナス成長に陥ろう。
インフレ率は4.5%に低下しよう。絶対額では小さくなるものの財政黒字及び国際収支上の経常収支の黒字は、拡大的な財政運営により維持される。
もっとも世界経済の回復の速度・規模、或いは国際金融市場の回復度合いによっては下振れリスクも残されている。
サウジアラビアには、低油価でも余剰生産能力を維持することを通じて原油価格を安定化させる指導的役割を期待したい。
サウジアラビアの銀行部門は確固としたものである。銀行の流動性を強化し、銀行間市場を安定化させるために採られた政策を評価する。
銀行のリスク・メーネージメント制度の改善や金融部門評価プログラム(FSAP)の完全実施、マネーロンダリング取締り及びテロ支援取締り(AML/CFT)の評価を含む金融規制及び監査法の強化を勧告する。
こうした政策は銀行部門の収益を確保し資本を維持するのを助けてきた。
米ドルとの連動性は信頼しうる安定的な役割を果たし、マクロ経済の安定に貢献してきた。ただし、IMF理事の中にはGCC通貨同盟での柔軟性のある為替レートの設定を求める者もいる。
将来設立されるGCC中央銀行の運営上の責任の明確化や統治構造の確立を通じて、通貨同盟に向かうことを薦める。
マクロ経済の安定化と非石油部門の成長には財政政策が鍵となる。世界景気後退の影響の最小化のために確固とした財政政策を採択することを各国当局に慫慂する。
財政刺激策は資本支出に焦点を当てており、多角化した国内成長の達成や世界経済の回復に貢献するだろう。同時に、財政政策は中期的持続可能性を保つために柔軟性を維持しすべきである。また歳出は回復が確かなものとなった暁には調整すべきである。

 因みに、IMFは2009年の石油輸出収入が1591億ドルと2008年の2814億ドルから77%減少し、2009年のGDPが3770億ドルと2008年の4690億ドルから20%縮小するとしている。

    表 サウジアラビア経済の見通し(IMF報告書からの抜粋)
   単位 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年
実質GDP成長率 5.6 3.2 3.3 4.4 ▲0.9
実質石油GDP成長率 6.2 ▲0.8 0.5 4.8 ▲10.3
実質非石油GDP 5.2 5.1 4.7 4.3 3.3
名目GDP 億ドル 3160 3570 3840 4690 3770
消費者物価上昇率 0.6 2.3 4.1 9.9 4.5
財政収支/GDP 11.6 19.3 19.6 17.6 8.5
経常収支/GDP 28.5 27.8 24.3 28.6 3.7
SAMA純資産残高 億ドル 1505 2214 3013 4385 4751
出所:IMF

(8月20日、記)
<関連情報>

先送り・中止となったサウジアラビアのプロジェクトは相対的に少なく約80件・200億ドルのみ【8/7】

アフリカ4カ国での米生産・輸出プロジェクトを2009年中に開始予定のサウジアラビア【8/7】

アフマド・ハマド・アルゴサイビ・&ブラザースのグループ企業2社を管理下に置いたバハレーン中央銀行【8/4】

官民あげて節水キャンペーンを行うことになったサウジアラビア【7/31】

サウジアラビアの名門アフマド・ハマド・アルゴサイビ・&ブラザース向け融資で貸し倒れ引当金の計上の基準を明らかにしたUAE央銀行【7/31】

サウジアラビア教育省と総額5億3300万ドルの学校建設事業に調印した中国鉄道公司【7/31】

(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)