ブーム時に蓄積した資産が2009年の中東経済の緩衝材となると見る国際通貨基金(IMF)
(2009年4月28日掲載)

 国際通貨基金(IMF)は2009年4月22日、6ヶ月ごとに発表している「世界経済見通し(World Economic Outlook)」の最新版を明らかにし、2009年の中東経済については、ブーム時に蓄積した資産が国際金融危機の影響への緩衝材となるとの見方を示した。国際通貨基金(IMF)は、最新見通しの中で、2009年の世界経済が戦後最悪の景気後退に見舞われているとした上で、世界の成長率について当初の予想を2%近く下方修正する▲1.3%と予測した。特に、先進諸国の成長率が▲3.8%に落ち込むと予測する一方、新興国についてもプラス成長は予想されるものの中国6.5%、インド4.5%などと成長率が鈍化すると予測している。尚、日本については2009年1月時点の成長率見通し▲2.6%を▲6.2%へと大きく下方修正している。


 中東地域の経済に関しては、ブーム期に蓄積した緩衝帯を活用できることに加えて、各国政府が景気刺激的な政策を導入していることから世界危機の影響が緩和されると見立てている。国際通貨基金(IMF)は、特にクウェイト、リビア、オマーン、サウジアラビアは成長に不可欠な政府による高支出が民間部門の活動の縮小を穴埋めすると分析している。また、エジプト、ヨルダン、クウェイト、サウジアラビア、UAEの中央銀行は、準備率の引き下げや流動性の供与、金利の引き下げなど適切な対応を行ったと論評している。こうした結果、2009年の中東経済の成長率は、2008年の6.0%からは落ち込むものの2.5%は維持すると予測している。但し、世界的な景気後退の影響から、中東おいても労働者送金・観光収入・輸出の減少は不可避と見ている。


 尚、国際通貨基金(IMF)は、中東主要国の2009年の経済見通しについて概要次のように寸評している。


サウジアラビア:過去に蓄積した資産による高水準の政府支出が国際金融危機の影響を緩和するものの、2009年の成長率は▲0.9%と2008年の4.6%から大きく低下する。但し、2010年には2.9%の成長へと回復する。

イラン:原油価格の低下が大きな課題となっている。アハマディネジャド大統領が、高油価の時にも歳入の多くを国民に人気のある事業に配分を続けたことから余剰資金が少なくなっている。外貨収入の約80%が石油収入であるだけに、6月に大統領選を控えるアハマディネジャド大統領にとって経済不振は大きな課題となっている。

イラク:この国も原油価格の低下が重石となっている。経済復興に巨額が必要だが、治安懸念から外国企業の進出が遅れている。

ドバイ:巨額事業の遅延・中止や外国人労働者の流出が起きている。投資家の減少は不動産価格の低下などを生み、連邦政府が救済に乗り出した。2009年のUAE全体の経済成長率は、2008年の7.4%から▲0.6%へと大きく落ち込むが2010年には1.6%へ回復しよう。

カタール:天然ガス生産量の倍増から2009年も18%の高い経済成長率が予想される。

レバノン:多額の債務返済があるほかGCC諸国からの送金収入の減少も予想されることから大幅な景気後退は不可避である。

エジプト:観光・スエズ運河・労働者送金の各収入の減少が予想されることから、2009年の経済成長率は3.6%と2008年の7.2%から半減しよう。石油資産の蓄積も乏しい。

(4月23日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)