EUとのFTA交渉を停止しアジア諸国との交渉を急ぐことにしたGCC:ドバイ発

(2009年4月7日掲載)

 サウジアラビアの東部のダンマンにあるGCC商工会議所のアブドゥル・ラヒム・ハッサン・ナキ事務局長は、2009年4月1日、GCCがEUとのFTA交渉を停止し、アジア諸国との交渉に専心することを明らかにした。同事務局長の同日の発言要旨は次の通りであった。

GCCは、今般、EUとのFTA交渉を決意をもって停止する。
GCCは、EUのFTAに関する条件が明らかになるまで交渉を再開しない。
EUは輸出品に対する関税の撤廃に加えて、政治的条件を課している。
このためGCCはEUとのFTA交渉を停止し、代わりにアジア諸国との同様の交渉を進めることを決定した。


 GCC事務局は2009年3月、調査報告書を発表し、その中で、EUが受け入れることのできない要求をしているため、20年にも及ぶ交渉にも関わらずFTAの合意に達することができないと述べEU側を強く非難していた。同報告書は、「GCCは経済の多角化とEUとの貿易赤字の解消のためにEUとのFTAを希求してきた」「EUのGCC向け輸出の増加とGCCの輸出品に対するEUの関税のために、GCCの対EU 貿易収支は常に赤字を余儀なくされてきた」と述べ、GCCとしてはEUとのFTAの締結で経済多角化と貿易赤字の解消の二つの問題を達成しようと考えていたことを強調した。


 しかし、同報告書は、「EUとのFTA交渉にとって障害のひとつは、EUが関心を東欧に移してしまったことから、GCCとの貿易不均衡の解消に全く熱意を示さなくなったことである」「今ひとつの障害は、EUがGCCの経済発展や多角化に興味を覚えていないことである」「この点は、EUの投資が自ら必要とする石油部門にかたよっており、GCCの生産的部門に対する投資が限られていることからも明らかだ」と続け、EUが余りに利己的であると批判している。


 さらに、報告書は、「EUはGCC諸国に対する技術移転についても何ら努力しておらず、GCCを単に消費市場としてとらえているに過ぎない」と断定し、EUの姿勢に疑問を投げかけている。


 GCCと外国との貿易額を見ると依然EUが第一位の相手となっている。因みに、GCC・EU貿易額は、2005年の1070億ドル、2006年の1100億ドルから2007年には1325億ドルと増加している。しかしながら、貿易収支を見ると、EUのGCC向け輸出が増加するなか、GCCのEU向け輸出品が原油、天然ガス、石油化学、アルミニウムに限られていることから、常にEU側の大幅黒字に終わっている。例えば、EUの対GCC貿易黒字は2006年には約170億ドルであったが、2007年には史上最高の約549億ドルへと3倍強に拡大している。


 GCCのEUに対する不満が高まるにつれ、GCCにとっては戦術的な意味はあるにせよアジア諸国への接近が目立ち始めている。他方、中国、インドのみならず、シンガポールやマレーシア、ベトナム、フィリピンなどの東南アジア諸国のGCC重視の姿勢も鮮明になりつつある。但し、アブダビやカタールの例を見るまでもなく海外投資面やGCC諸国の開発事業などでのアドバイス面では英国を中心とするEU諸国の影響力には大きいものがある。


 今後、GCCとアジア諸国との関係が、いっそう強化・深化されるか否かは、アジア諸国がこうした面でも積極的な役割を果たしうるか否かにかかってこよう。特に、投資面でのつながりに比べて大きく遅れを取っている開発事業などの面での関係、とりわけGCC各国の経済多角化や雇用創出、実学教育などでの新たな役割を担えるか否かが肝要となってこよう。

(4月3日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)