5月まで支払問題で猶予を得たドバイ・ワールドの合弁事業相手のMGMミラージュ

(2009年4月3日掲載)

 MGMミラージュは、2009年3月27日、注目されていた同日に返済期日の到来した2.2億ドルの支払いを単独で無事に終えた。この支払いについて、銀行団は合弁事業を形成するMGMミラージュとドバイ・ワールドの子会社インフィニティ・ワールドが折半で行うことを強く求めていた。しかし、銀行団は最後の段階で折れ、MGMミラージュ単独での支払いを認めた。


 ドバイ・ワールド側が支払いを拒んだのは、ラスベガスの80億ドル規模の大型複合施設を建設しているMGMミラージュが資金難に陥り、米国証券取引委員会に同事業の内容ほかを開示したことがドバイ・ワールドとの合弁事業契約に抵触すると判断したためであった。このためドバイ・ワールドは、デラウェア連邦裁判所にMGMミラージュによる内容開示が契約違反に当るとして起訴し、同社が負う一切の支払い義務を解くよう求めていた。他方、資金繰りに窮したMGMミラージュは、万一の事態に備えるために、連邦破産法11条の適用の申請も視野に入れて法律事務所のデューイ&ルバブの起用に踏み切っていた。


 MGMミラージュが取りあえず3月27日に期日を迎えた債務の支払いを終えたことについてドバイ・ワールドは、「今回の支払いはラスベガスでの合弁事業を破産に淵から救い出した」「しかしながら、しかしながら、今回の支払いはMGMミラージュが直面する流動性の問題にとっては一時的な解決でしかない」「ラスベガスのシティ・センター事業に87億ドルを投下するか否かは、リストラという選択肢も含め役員会で時間をかけて検討すべき問題である」との声明を出し、今後の推移を慎重に見守ると同時に、事業自体の早急な見直しが必要との姿勢を明らかにした。


 MGMミラージュはシティ・センター関連で130億ドルの負債を抱えている。MGMミラージュは、2007年4月時点では、シティ・センター事業の総費用は74.9億ドルと言っていた。しかし、その後、同費用は89億ドルへと膨らんでしまった。当初、MGMミラージュは、同事業を進めるために50億ドルの借り入れが可能としていたが、30億ドルに下方修正され、さらに最終的には18億ドルへと再度下方修正されていた。尚、インフィニテイ・ワールドがこれまでにシティ・センター事業のために注ぎ込んだ資金は46億ドルと見られている。


 「米国カジノを50億ドルで買収したドバイ首長国の持株会社のドバイワールド」(2007年9月4日掲載)から当初の契約を振り返ってみれば、凡そ次のようなものであった。



 ドバイ首長国の持株会社のドバイ・ワールドは2007年8月22日、米国のカジノの大手であるMGMミラージュと総額50億ドルの取引を行うことで合意した。この合意によりドバイ・ワールドはMGMミラージュ株の発行済み株式の1400万株を12億ドルで購入する権利を得た。因みに、一株あたりの購入額は84ドルと、同日のニュヨーク株式市場での同社の株価より14%高であった・加えて、ドバイ・ワールドは合意に基づき同価格(12億ドル)でさらに1400万株を購入し、同社の発効済み株式を合計9.5%取得する。

 ドバイ・ワールドはMGMミラージュ株の取得にほかに、MGMがラスベガスで2009年に開業予定の複合施設「シティ・センター」の株式の50%を27億ドルで購入する。因みに、「シティ・センター」は、娯楽施設、ホテル、高級コンドミニアムで構成されている。ドバイでは賭け事は禁じられているものの、今回の買収によってドバイ・ワールドは世界的な賭け事(ギャンブル)事業の経営者となることになる。

 ドバイ・ワールドとシティ・センターの取引のためにMGMは持ち株会社「シティ・センター・ホールデイング」を新たに設立し、その資本金の54億ドルを両者で分け合う形を取る。さらにシティ・センター事業が予定通り2009年後半に開始された暁には、MGMはドバイ・ワールドから別途1億ドルが支払われる契約を結んでいる。

 ドバイ首長国の3大アドバイザーの一人として知られるスルタン・ビン・スレイヤム/ドバイ・ワールド会長は声明を発出し、「我が社はMGMの資産、場所、ブランドに魅力を感じた」「我が社のビジョンは、記念碑的な不動産を世界中で保有することである」「今回の買収の発表は、ランドマーク的な開発事業を行うことで知られる両社を結びつけた」「両社は豪奢な生活の内容や目的地観光を変革する力を持っている」と述べ、今回の買収の狙いと効果を明らかにした。

 果たして、今回のドバイワールドによる世界的な賭け事事業グループとして知られるMGM株の一部購入や関連施設への投資が、今後、ドバイ首長国のみならずアラブ首長国連邦、さらにはGCCにおいてどのように見られることになるのか。イスラムの戒律に相対的に厳格な諸国の多いGCCの今後の方向を見る上でも興味は尽きない。


(3月31日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)