イスラム金融は今回の国際金融危機の影響を最小化できると説く著名なサウジ人エコノミスト
(2008年10月28日掲載)

 国際金融危機が深刻化するなか、イスラム金融は危機の影響を受けないとする分析が台頭する一方、不動産投資が多いので何れ影響が出てくると説く金融マンいるなど見方が大きく分かれている。そうした議論を意識してのことか、ファイサル国王イスラム研究国際賞の受賞者で著名なエコノミストであるサウジアラビアのウメル・チャプラ氏は、「イスラム金融は今回の国際金融危機の影響を最小化できる」と説いている。2008年10月23日付けのサウジアラビア紙「アラブ・ニューズ」が同氏の説明内容を掲載しているので、その要点を紹介することとしたい。


イスラム金融は緩やかな条件で融資を行うことでサブプライム・ローンの借り手が抱える問題を小さく出来る。

これにより豊かな銀行員の救済に投下される数十億ドルが節約できる。

ジョージ・ソロス氏はデリバティブを「水爆」と呼び、ウォーレン・ビュフェット氏は「金融大量破壊兵器」と呼んだ。デリバティブの規模は600兆ドルと世界経済の規模の10倍超となっている。このデリバティブには、54.6兆ドルのクレジット・デフォルト・スワップス(CDS)を含んだ数字である。

現在の国際金融危機は過去40年で最悪のものである。しかも今起きていることは氷山の一角に過ぎないのではとの懸念も広がっている。危機がさらに深刻化すればクレジット会社や一般企業、デリバティブのディーラーの倒産につながるだろう。

イスラム教徒は、適切な監視制度の伴った真のイスラム金融制度を構築しなければならない。そうした動きは他者の(好ましい)追随を生もう。

イスラム金融は、直接の融資・借り入れにより債務を創出することを認めない。イスラム金融は、不動産の販売或いはリースを通じて債務を創出する。不動産の販売やリースは、ムラバハ、イジャーラ、サラーム、イスティスナ、スクークといった名称の金融方法で行われる。

イスラム金融では、販売或いはリースされる資産は、本物でなければならず、想像上や概念上のものであってはならない。売り手は、販売或いはリースされる財を所有せねばならない。取引は、実際にやり取りの伴う真実のものでなければならない。債務は売却できない。それ故、債務に伴うリスクは他者に移管できない。

イスラム金融で決められた条件は、大半の投機的取引を取り除くことになる。イスラム商品を介して供与された融資は、実際の経済の拡大と一緒には拡大することは出来る。イスラム金融は、これによって過剰な与信の拡大を抑制することができる。

債務の売却でリスクを他者に移すことを防止する条件作りが重要である。これにより、実際にやり取りする意図のない多くの投機的取引やデリバティブ取引を取り除きうる。

債務の売却でリスクを他者に移すことを防止する条件が整備されていれば、取引量・取引額の不必要な膨張や、債務が実際の経済よりも大きくなることも防ぎうる。

さらに、それにより巨額の金融資源が真の経済部門に廻ることになり、雇用機会を拡大し、必要とされる財やサービスの生産が拡大する。

イスラム金融が金融制度に導入したいと考える規律は、政府の中央銀行借り入れが価格や金融安定の目標水準に合致するまでは実現しないであろう。

イスラム金融制度では、与信は、専ら売り手が所有し買い手が受け取りたいと思う財やサービスの購入を行うためのものである。
イスラム金融では、与信者は債務の販売の禁止によりデフォルトのリスクを負わねばならない。これによって与信者はリスクを一層慎重に計算するようになろう。
銀行の過剰且つ無節操な融資が現在の国際金融危機の根本原因である。

三つの要因がこれを可能とした。第一は、金融市場での市場規律の不適切さ。第二は、デリバティブ、特にCDSの拡大。第三は、最後は中央銀行の救済があるとの銀行の慢心、である。

損失から無謬だとの誤った考えが過ちを犯した出発点である。何故なならば、それ故に銀行は融資事業を注意深く評価しなくなったし、与信の不健全な拡大を招来し、資産価値の維持できないレベルでの上昇を生み、さらには投機的投資を導いたからだ。

米国でのサブプライム・ローン危機は過剰且つ無節操な融資の産物である。この点では、例えば証券化が決定的な役割を果たした。その過程で優れた債務とそうでない債務が混合された。CDSの売却でデフォルトの全リスクは最終的な購入者に移管された。

これらによって市場に不確実性が生まれ、信用収縮を招いた。これによって健全な銀行も資金の取入れが出来なくなった。

ということで、過剰で無節操な融資があり、しかも融資を行う者が返済される自信を持っていない時に、デフォルトを防止しようとCDSのようなデリバティブに逃げ道を求めることとなった。スワップの購入者は、売り手(例えば、ヘッジファンド)に債務者がデフォルトした場合に受け取る補償分としての上乗せ金(プレミアム)を支払ってである。

(10月23日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)