ようやく閣議承認となった米国・イラク地位協定

(2008年11月21日掲載)

 イラクのゼバリ外相と米国のクロッカー駐イラク大使は、2008年11月17日、3年以内での米軍の撤退を盛り込んだ米国・イラク地位協定に調印した。同協定は依然、イラク議会の承認が必要だがイラク政府は11月末までに承認を得られると楽観的な見方をしている。調印後、ゼバリ外相は「明らかに今日はイラク、米国関係にとって歴史的な日となった」と述べ喜びを露にした。他方、クロッカー米大使は「両国が調印したのは、経済・文化・治安・技術・保健などの諸分野での長期的戦略的枠組である」と語り、協定の意義を強調した。イラク政府は11月15日、閣議を開催し、賛成27、棄権1、欠席10の投票結果で承認していた。


 イラクのマリキ首相は、一部のシーア派系議員が協定に反対していることもあり、国民の支持を得るべく11月18日には全国放送のテレビに登場し、「今回の協定は完全なものとは言えないにせよ、3年後での完全な主権の回復に向けたものである」と述べ、理解を求めた。議会で約30人の支持者を持つサドル派が反対を表明したほか、11月19日には議席数15で同じシーア派のファディーラ党も反対を表明した。イラク議会(定数275)は11月24日に本協定について審議する予定となっている。


 シーア派系議員の投票動向に大きな影響を与える大アヤトラのアリ・アル・シスターニ師は、2008年11月15日本協定について説明するためにマリキ首相が派遣した2人の特使に、「自分は宗教上の立場から協定支持を公言することはできない」「協定は、理想的なものではないが、可能な選択肢の中では最善のもののように思える」と伝えたと言われている。


 尚、注目されるイランの反応だが、現時点では統一見解が出きていないようだ。なぜならば、ラリジャニ国会議長が「米国のヘゲモニーを強めるものなので、イラク議会は抵抗すべき」と述べたのに対して、アヤトラ・マフムード・ハシェミ・シャルーディ司法長官は「イランは上手く立ち廻った」「時間表に従い米軍が撤退することを望む」と語るなど、要人の評価が分かれているからである。


 米軍はこれまでにイラクの18県のうちの13県についてイラク軍に治安権限を委譲している。


<米軍が治安権限を持つ県>
① ニナワ
② タミーム
③ サラハッディーン
④ ディヤラ
⑤ バグダッド


<イラク軍が治安権限を回復した県>
① ムサンナ(2006年7月移譲。以下、単に年月のみで記す)
② ディカール(2006年9月)
③ ナジャフ(2006年12月)
④ ミサン(2007年4月)
⑤ ドゥホーク(2007年5月)
⑥ エルビル(同上)
⑦ スレイマニア(同上)
⑧ カルバラ(2007年10月)
⑨ バスラ(2007年12月)
⑩ カディーシャ(2008年7月)
⑪ アンバル(2008年9月)
⑫ バビル(2008年10月)
⑬ ワシット(2008年10月)

(11月21日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)