緊急現地報告:国際金融危機の影響による不動産価格の下落に揺れるアラブ首長国連邦(UAE)~その2
(2008年11月18日掲載)

融資条件を厳格化したUAEの銀行


 UAEで業務展開中の銀行の何行かが、2008年11月12日、ドバイのデベロッパーに勤務する外国人従業員向けの不動産ローンを停止した模様である。理由は、これらデベロッパーが人員整理を行う可能性があると判断されたためである。仮に、デベロッパーに勤務する外国人従業員に不動産ローンを実施した後に彼らが解雇されれば、ローン返済が困難になると考えたようだ。例えば、エミレーツNBDの場合、①タムウィールPJSC、②アムラック、③ダマック、④ダマン投資PSC(③の子会社)、⑤エマール、⑥ナキール、⑦サマ・ドバイ、⑧ドバイ・プロパティーズ、⑨ユニオン・プロパティーズ、⑩KMプロパティーズの10社が対象となったと伝えられる。

 アラビアン・ビジネスは2008年11月13日、エミレーツNBDがドバイの金融及び不動産会社に勤務する外国人に融資しないようにとの内部通信を11月6日付で回覧したと報じた。同行は否定しているが、アマル・アル・セルカ小売信用部長名で出された内部通達は次のように述べているという。

 即ち、「現在の市況に鑑み、人員整理や解雇の恐れがあるので、下記の企業に勤務する外国人従業員向けの与信を停止することを決定した」「各支店は、直ちに、これら企業に勤務する外国人従業員向けの小売信用を供与しないよう勧告する」と。

 また、エミレーツNBDは、融資対象者の最低必要月額賃金を従来の3000Dhから5000Dhに引き上げたほか、賃金毎に別途定められた借入上限額も制限した。加えて、自動車ローン及び不動産担保ローンのダウンペインメント比率を20%から50%に引き上げている。尚借入者の賃金別の新たな借入上限は以下の通りとなった。

 月額 15,000Dh~     :借入上限は賃金の20倍
 月額 10,000Dh~15,000Dh:借入上限は賃金の15倍(従来は28倍)
 月額      ~9,999Dh :借入上限は賃金の10倍

 エミレーツNBD以外の銀行でも次のような変更が行われている。

HSBC:
融資対象者の最低必要月額賃金を従来の1万Dhから2万Dhに引き上げたほか、アブダビ不動産であればダウンペイメント比率を40%に、ドバイの不動産であれば同比率を30~40%迄とした。

ロイズTSB:
アパート購入ローンを中止したほか、ヴィラを対象とするローンの場合、融資限度額を担保価値の50%とした。

ナショナル・バンク・オブ・アブダビ:
ローン実行時のダウンペイメント比率を、アブダビの不動産の場合、25%(従来10%)、ドバイの不動産の場合、50%、北部首長国の不動産の場合、60%とそれぞれ改定した。


不動産ローン支援策を検討するUAE中央銀行


 UAE中央銀行は2008年11月12日、声明を発出し、「理事会は、UAE財務省と協議しつつ、不動産ローンを存続させるべく、不動産ローンを支援する金融手段を導入するとの提案に関する覚書を議論した」と述べ、UAE中央銀行理事会が、国際金融危機の影響をまともに受けている不動産ローン市場の救済策を協議したことを明らかにした。

 また、同声明は、「理事会は、国際金融危機による課題に対処するために提案された監査戦略と規制手続きについても協議した」と述べ、中央銀行が今後どのように各行の経営内容を監督すべきが議論したことを明らかにしている。

 UAE国内からは一部の銀行による新たな融資制限などが問題を大きくしたと指摘し、混乱の収拾に向け、10億ドルから20億ドル規模の不動産購入基金を設立すべきとの声もあがっている。また、デベロッパーの中からは、銀行は正当な理由や根拠なしに優秀なデベロッパーや投資家向けのローンまで止めるべきではないとの不満も出されている。


デベロッパー保護に動き出したドバイ土地庁

 ドバイ土地庁は、2008年11月12日、不動産購入者が購入契約を破棄したり、債務不履行に陥った場合、購入者は支払額の30%を喪失し、同30%をデベロッパーが取得するとの新規則を発表した。ドバイ土地庁のスルタン・ブッティ・ビン・ミシュリン局長が明らかにしたもの。

 同局長は声明を発出し、「2008年法律13号第11条に基づき、デベロッパーは土地庁に購入者が契約に違反した場合、通知せねばならない」「土地庁は購入者に連絡し、30日以内に契約上の業務の履行を求める」「履行されない場合、デベロッパーは契約を破棄する権利を獲得し、購入者の支払った金額から上限30%を差し引いた金額をリファンドする」と説明している。

 さらに同声明は「契約破壊の要請は、不動産購入者ではなくデベロッパーが行うものとする」「しかし、契約となった場合、デベロッパーは契約額の30%を保有する権利を有する」と続け、新規則がデベロッパーを保護する内容に変更されたことを明らかにしている。

 ドバイの不動産業界の専門家は、この新規則の導入で、単に売り抜けることだけを目的とする投機筋は今後、同様の動きができなくなると語り、新規則がドバイ不動産市場の正常化・健全化・成熟化に資するとの見方を示した。


 次回は、不動産販売の活性化に向けてエマール・プロパティーズが新たに導入した2つの購入方式(“Plan to Own”, “Rent to Own”)ほかについて紹介することとしたい。

(11月16日、記)
<関連情報>

緊急現地報告:国際金融危機の影響による不動産価格の下落に揺れるアラブ首長国連邦(UAE)~その1【11/18】

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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)