緊急現地報告:国際金融危機の影響による不動産価格の下落に揺れるアラブ首長国連邦(UAE)~その1
(2008年11月18日掲載)

不動産価格の下落を伝えたHSBC報告書


 HSBCホールディングスは、2008年11月12日、10月のドバイの不動産価格が前月比4%下落し、アブダビも5%下落したとの報告書を発表した。因みに、UAEの不動産価格が下落するのは、2002年に外国人の不動産購入を認めて以降、初めてのことである。同報告書は以下の諸点も明らかにした。

最も価格が下がったのはドバイのヴィラで、9月比▲19%となった。
不動産価格の下落と反比例するように、賃貸価格は上昇している。
潜在的な不動産購入者が、与信市場の先行きがはっきりするまで購入を先送りするので、賃貸市場は強含みで推移しよう。
アブダビ不動産市場は、今後2年の供給に比べて需要が大きいので近い将来に(再び)タイトになろう。

 不動産価格の下落について地元のエコノミスト等は「過熱気味であった部分がなくなり正常な状態に戻るので、むしろ好ましい是正」と見ている。また、「人口増を考えれば今後も需要は伸びるので、何れ回復する」と述べ、一時的な後退はあっても、UAEの不動産需要は根強いので、何れ回復に向かうと分析していた。例えば、スルタン・ビン・スレイヤム・ナキール会長は「信頼が戻れば価格は上昇する」「不動産販売の落ち込みは、投機家が最終需要者にとって代わられるので歓迎すべきものだ」(ガルフ・ニューズ紙、2008年11月15日)と語り、当面の不動産価格の下落を調整過程と歓迎している。


人員削減の可能性に言及したエマール

 ドバイ株式市場の約10%を占め、同国最大のデベロッパーとして知られるエマールが、2008年11月13日、同社の11年の歴史で最も厳しい危機に対応するために、人員の削減を計画していることを明らかにした。因みに、同社の広報部長は、凡そ次のような内容の声明を発表し、人員削減を検討するに至った背景を説明した。

エマール・プロパティーズは、長期的な収益性を強化し、株主に付加価値を与えることを約束している。
世界の18市場での優れた業績により、エマールは国際金融危機に賢く対応していることを示した。
しかしながら、今、我が社の直面する新たな課題に対処するには、成長戦略の方向を是正し、ビジネス・モデルを新たな現実に対応させることが重要である(注1)
エマールは、大規模な雇用提供者であり、数百の新規雇用の創出を行ってきたが、今や効率性を上げ、生産性を最大化することが肝要となった。
それには、雇用政策の見直しと人的資源の最適化が含まれる。
エマールは、市場条件に即し、企業の長期的利益に最も資する雇用戦略を追求する。

 既に、ドバイのダマック・グループが従業員の5%に当たる200人の削減を発表しているほか、オムニヤットも従業員を削減している。また、人員削減の噂が出たドバイ・プロパティーズ・グループの広報部長は「噂が真実ではない」「我が社は2008/2009年度の意欲的な事業計画を持っている」(ガルフ・ニューズ紙、2008年11月13日)と述べ、人員削減しない予定であることを強調した。

(注1): ドバイ国内で不動産開発事業から、出資してきたハンプトンズ・インターナショナル(英国)、ジョン・レイング・ホームズ(米国)といった不動産業者を通じた国際的な不動産事業やアルマーニ・ホテル事業、保健・教育部門事業などへの拡大を指す。


事業の見直しに着手したUAEのデベロッパー


 ドバイの大手のデベロッパーは、何れも、今後の開発事業の時間表の見直しを含む活動の縮小に着手した。この点について、UAE工事契約者連盟のイマード・アル・ジャマル副会長は「世界中が景気後退に見舞われており、ドバイの事業も一部が先送りとなり、一部はキャンセルされよう」(ザ・ナショナル紙 2008年11月14日)と語り、国際金融危機の影響から、ドバイの開発事業も見直しを迫れられていることを明らかにした。以下では、主なデベロッパーの対応振りを整理することとしたい。

ナキール社:「今後数ヶ月で幾つかの事業活動の規模縮小があろう」
ユニオン・プロパティーズ
「信用市場の見通しがつき、銀行の融資が再開されるまで新規事業は発表しない」
「既存事業の85%は完成したので、今後は賃貸事業の拡大(22億Dh→50億Dh)に焦点をしぼる」
ダマック・プロパティーズ
「今後の事業の予定変更を視野に入れつつ建設予定表を見直した。」
リミットレス
「開発ペースを継続的に見直しており、市場の状況に合わせて調整する」
エマール・プロパティーズ
「雇用計画を見直し中であると共に、購入者向けの新規ローンの供与を決定した」


 次回(その2)では、融資条件を厳格化したUAEで活動中の銀行の動きや、UAE中央銀行・ドバイ国土庁の対応、或いはエマールの新たなローンについて見ることとする。

(11月15日、記)
<関連情報>

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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)