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| (2008年11月4日掲載) |
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ゴードン・ブラウン英首相は2008年11月1、2日の二日間、サウジアラビアの首都リヤドを訪問しアブドゥラ国王ほかと会談した。会談では主に国際金融危機への対応策が主要議題となり、ブラウン首相がアブドゥラ国王にIMFへの追加資金の提供を求めたほか、今後の国際金融システムのあり方や石油情勢、イランの核開発問題などが議論された。さらに、サウジアラビアの対英投資、サウジアラビアと英国との貿易・事業の促進策なども話し合われた。さらに、ブラウン首相は滞在中にリヤド郊外のイスラム過激派の矯正キャンプを訪れ、キューバのグアンタナモ収容所帰りの収容者とも面談した。以下では、ブラウン首相を迎えたサウジ紙と首相の本国である英国紙との報道振りの比較も交えながら、今回のサウジ訪問について見ることとしたい。 「サウジ(アラビア)の支援を求めたブラウン(英首相)」「(サウジ)王国と緊密に作業することを約束したブラウン(英首相)」。前者は2008年11月2日付けのアラブ・ニューズ紙(以下、ANと略す)の見出しであり、後者は11月3日付けのものである。どちらもブラウン首相がお願いをし、サウジアラビアが聞き役であったとの印象を読者に与える見出しである。この見出しにブラウン首相の今回の来訪に対するサウジアラビアの姿勢が読み取れる。即ち、結論としては、ブラウン英首相の要請は受けたが、少なくとも建前的には現時点では聞き置くに留めるとの姿勢である。 他方、英国紙の見出しは、「サウジ(アラビア)は弱体化した(世界)経済を支援するだろうとゴードン・ブラウン(首相)は語る」(タイムズ紙、2008年11月3日)、「ブラウン(首相)がGCC金融プランで勝利を主張」(インデペンデント紙、同左)、「サウジ(アラビア)のIMF金融支援に望みあると語るブラウン(首相)」(ガーディアン紙、同左)、「GCC金融支援に望みあると語る(ブラウン)首相」(BBCウェブサイト、2008年11月2日)と、何れもブラウン首相がサウジアラビア或いはGCCから何かを得た感触との書き振りである。だが、見出しをよく見ると支援といっても首相の心証であって、サウジ側が必ずしも言質を与えていない様子が伺われる。要は、先のサウジ紙の見出しが示唆したように、サウジ政府はブラウン首相の要請を聞き、その必要性と支援の用意のあることは表明したものの具体的には言及を避けた様子が窺える。 では、実際にどのようなやり取りが展開されたのかを各種の報道から類推して見よう。11月2日付けの「サウジ(アラビア)の支援を求めたブラウン(英首相)」との題名のアラブ・ニューズ紙の記事は、「ブラウン首相は11月1日、アブドゥラ国王との会談後、サウジアラビアや他GCC諸国に、資金供与により世界経済を安定化するのを支援するよう呼びかけた」と書き、まずブラウン首相から資金面で要請のあったことを伝えている。同じ記事は、ブラウン首相が英国を発つ前の声明で、「高い燃料価格は、全ての人の食料・エネルギー・運輸費用を直撃する。ガソリン・スタンドでの価格は下がったが、もっと下落すべきである」と語ったと述べ、石油情勢も議論されたことを示唆している。 さらに、同記事は、イアン・タイラー/バルフォア・ビーティCEO、トニー・ヘイワード/BP・CEO、ジョン・ローズ卿/ロールス・ロイスCEO、ディック・オリバー/BAEシステムズ会長、リチャード・ランバート/CBI専務ほかがブラウン首相に随行していると報じ、英国企業との商談も議論されたことを仄めかしている。加えて、「英国は政府系ファンドの投資に開放的である」「我が国は過去に政府系ファンドで困ったことはない」「政府系ファンドが今後もこれまでのように行動することを望む」とのマンデルソン・ビジネス相の発言を紹介し、英国が政府系ファンドの投資を求めていることも紹介している。 このほか同記事は、「アブドゥラ国王とブラウン首相は、中東和平、世界経済、その他両国関連の多くの事項を含む一連の問題を協議した」との駐リヤド・英国大使館の報道官の談話や、「英国にとりサウジアラビアは主要な戦略的パートナーであり、今回の(ブラウン首相の)訪問が6月にジッダで開始した産消対話を前進させ、12月のロンドンでの次回会合への期待を膨らませた」「サウジアラビアは11月15日にワシントンで開催されるG20会合で指導的な役割を果たすだろう。この会合は世界経済システムを安定化し再構築するために必要な行動に関するコンセンサス作りの好機である」「ブラウン首相の今回の来訪は、サウジ・英国の間に強力な商業・文化・教育関係を構築する好機でもある」との駐リヤド・英国大使館が前日に出した声明内容を紹介し、IMF資金支援のほかにも種々議題が話し合われ、G20でサウジアラビアの役割が期待されている点を強調した形となっている。 11月3日付けの「(サウジ)王国と緊密に作業することを約束したブラウン(英首相)」との題名のアラブ・ニューズ紙の記事は、今少し世界経済におけるサウジアラビアの役割の重要性が強調された内容となっている。また二国間経済関係の強化についても言及されている。要点のみに絞って箇条書きで紹介しよう。
他方、英国紙は、総じてブラウン首相の説得が功を奏してサウジアラビアの資金面での協力などを引き出すことには成功したものの、サウジ側の国内事情などもあって大きく宣伝するのは避けざるを得ない状況であることを示唆する書き方となっている。この点は先に紹介したタイムズ紙の記事に次のような形で明確に出ている。 ブラウン首相は、サウジアラビアは恐らく資金貢献するので、我々は世界的に大きなファンドを手にしようと述べたが、同首相はサウジアラビアを「錬金牛」のようには取り扱わないよう警告されたようだ。理由は、サウジアラビアが別途オイルマネーを使う計画を持っているからである。英国政府高官は、サウジ側から、巨額の要請をしないよう言われた。サウジ政府高官は、個人的な会話として、「サウジアラビアは過去十数年インフラや公共サービスに十分投資してこなかったので、今後、教育・研修・一般国民の生活向上に投資をせねばならない。それ故、サウジアラビアは国内の優先事項を西側経済の支援より上に置かざるを得ない」と説明した。英政府高官も「サウジアラビアは幾らでもミルクを出す牛のように見られたがっていない」と説いている。 タイムズ紙は、マンデルソン・ビジネス相が「サウジアラビア及びその他GCC諸国は、今や投資の見返りとして国際機関での以前よりも大きな役割を求めている」「我々は新興経済諸国にリップサービスするだけでは済まされない」「我々は新興経済諸国を対等に取り扱わねばならない」と述べたと記し、今後、サウジアラビアなどの湾岸産油国や中国、インドなどの新興経済諸国を新たな国際経済・金融枠組みの中で対等に扱う必要のあることを打ち出した。またブラウン首相の政府系ファンドに関するリヤドに向かう機内での発言、即ち、「政府系ファンドが英国の規則に従い商業的に行動する限り投資を歓迎する」を紹介し、英国が政府家ファンドの投資を歓迎していることを強調した。 上記のタイムズ紙の「サウジアラビアから資金面での協力などを引き出すことには成功したものの、サウジ側の国内事情などもあって大きく宣伝するのは避けざるを得ない状況」との見方を裏付けるように、インデペンデント紙も、「ブラウン首相が歴訪しGCC諸国の関与を引き出すことが重要なのである」「これはプロセス段階のことであり、何かが成されたということではない」とのマンデルソン・ビジネス相の発言を紹介している。さらに同紙は、「変革を行っており、進展を見せている諸国と共に作業することは世界の安定にとり重要である」「他国が行っている進展を認めることが重要である」とのブラウン首相の言葉を載せ、サウジアラビアの改革努力を見守りつつ支援する姿勢が必要と指摘している。 |
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| (11月2日、記) |
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| <関連情報> ●湾岸歴訪を前に中国、GCC産油国によるIMFへの追加資金の提供を呼びかけた英国のブラウン首相【11/4】 ●湾岸3カ国歴訪に当たり「英国と湾岸:共通の課題と共通の解決策」との署名入りの一文を発表したブラウン首相【11/4】 ●米財務省と国際金融危機の自国経済への影響・対応策や世界的な対応状況について協議したシェイハ・ルブナUAE外国・貿易相【11/4】 ●資金注入を回避しGCC諸国の政府系ファンドなどを引き受け先として73億英ポンド(約1兆6000億円)の増資を行ったバークレーズ銀行【11/4】 ●10月の一ヶ月で時価総額2500億ドルが失われたGCC諸国の7つの株式市場【11/4】 ●国際金融危機の影響を受けながらもGCC諸国の経済は力強く成長すると見る国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し」【11/4】 ●GCC諸国は蓄積した富で今回の国際金融危機を乗り越えうると見るメリル・リンチ会長【10/28】 ●GCC諸国の蓄積した富が今回の国際金融危機に対する緩衝材となると見る各国のエコノミスト達【10/28】 ●国際金融危機の影響は相対的に軽微だがGCC諸国の2009年の成長率は低下すると見るメリル・リンチ【10/28】 |
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| (幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>) |