南部石油会社、南部ガス社、イラク石油タンカー社の各総裁の更迭を巡り揺れるイラク
(2008年5月30日掲載)

 イラク政府が2008年5月中旬から中央政府による石油産業の掌握を確固としたものとすべく、南部石油会社、南部ガス社、イラク石油タンカー社の総裁を交代させていることがこのほど判明した。またイラク運輸省はバスラ空港のトップを挿げ替えており、地元では次はバスラ港のトップが更迭されるとの噂で持ちきりである。


 バスラ地方政府の高官は匿名を条件に外国メディアに、「一連の交代劇は、イラク第二の都市バスラの治安が改善したことを受けて中央政府が南部の石油産業の実権をシーア派のファディラ党から奪取しようとの試みであろう」との見方を伝えている。ファディラ党に近い地方政府の高官は、「新たにこれら企業のトップに任命された人物はマリキ首相とつながりのある人々であり、中央政府の政治的動機に満ちた人事異動である」「ダーワ党に極めて近い人物の南部石油社のトップほか幹部への登用は、10月1日に予定される地方選挙を前に重要な石油産業を押さえておこうとの明白な計画によるものであろう」と語り、中央政府の今回のやり方を批判している。


 カリフォルニア大学サンディアゴ分校のババク・ラヒミ教授は「今回の人事異動は宗派内の争いと見るべきである」「マリキ政権のやり方は地方のシーア派の人々を困惑させており、治安が依然万全ではないバスラで再度軍事衝突が起こる可能性を生み出した」「人事異動はダーワ党及びフセイン政権時代にイランに亡命していたイラク・イスラム最高評議会(SIIC)とファディラ党などとの広範囲に亘る闘争の一部である」「亡命勢力は10月の地方選挙を前に地元のシーア派勢力の力を殺ごうとしている」と解説し、人事異動がシーア派内部の権力闘争の結果であると分析している。


 バスラ県知事も党員であるファディラ党は2007年マリキ政権から離脱したが、南部イラクの石油産業では隠然たる力を維持している。シャハリスターニ石油相の署名入り親書は南部石油社のジャバール・アル・エビ総裁を更迭後、石油省顧問とし、後任にはキファフ・ナウマン副総裁を一時的に当てるとしている。同親書は5月15日から効力を発するとしているが、ジャバール・アル・エビ氏は少なくとも先週は社内で通常通りに勤務していた。他の2者宛ての親書も同日付で出されている。


 バスラ県側は、事前に何の相談もせず南部石油社の総裁ほかの人事を決めたのは違法ではないかとの声を上げている。例えば、ムナジ-ル・ハンジャール・バスラ県評議会経済委員会委員長は「これまでのところ石油省はちゃんとしたジャバール・アル・エビ総裁の更迭理由を説明していない」「バスラ県評議会は石油省の決定に従わないことを決めた」と反発を強めている。


 他方、石油省は違法性を否定している。アシム・ジハード石油省報道官は「石油省は『適切な場所に適切な人物』という政策の下、高官の任命及び罷免する権限を持っている」と述べ、バスラ県評議会の主張に反論している。さらに同報道官は「ジャバール・アル・エビ総裁の石油省顧問への就任は昇進である」「また南部ガス社とイラク石油タンカー社の総裁の更迭は、そもそも任命自体が閣議承認を経ていないことが理由である」と語り、イラク石油省の決定に違法性はないことを強調している。

(5月27日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)