先進7カ国の財務相、国際金融機関等に政府系ファンドに関する書簡を送付したアブダビ政府
(2008年3月21日掲載)

 ソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)と呼ばれる政府系ファンドによる欧米投資に懸念が高まるなか、アラブ首長国連邦(UAE)を構成する7つの首長国の一つであるアブダビ首長国政府が、2008年3月12日付けで、米国をはじめとする先進7カ国の財務相や国際通貨基金、世界銀行、欧州委員会に、政府系ファンドを政治目的に使わないことなどを謳った3頁の書簡を送っていたことが明らかとなった。2008年3月17日付けの米国紙ウォール・ストリート・ジャーナルのウエブサイトが報じた。


 ユーセフ・アル・オタイバ国際局長の署名のあるアブダビ政府の書簡は、アブダビ政府が投資を決して外交手段として使わないことを確約している。また同書簡は、SWFと呼称される政府系ファンドも、年金基金と同様に、保健や基礎インフラといった公的な恩恵を付与することを目的とする長期的収益に焦点を当てていることを強調している。さらに書簡は、独立性、商業性に基づく投資決定、投資対象国の法律・規則類の遵守といったアブダビの9つの投資原則についても説明している。


 周知のように米財務省の高官たちが、2008年2月下旬、アブダビ投資庁(ADIA)及びシンガポール政府投資公社(GIC)の幹部と会談した。米財務省の高官たちは、この会談で、世界的に金融危機に襲われている時期に政府系ファンドの対米投資を萎縮させることなく彼らの行動規範を策定する方策を協議したと言われている。


 尚、シンガポールの政府系ファンドのテマセク・ホールディングスのサイモン・イスラエル専務理事は、2008年3月6日、米国下院金融サービス委員会の公聴会で投資目的等について次のように証言している。即ち、「シンガポールと米国は軍事・貿易面で密接な関係を維持している」「テマセク・ホールディングスの成功は商業原則に基づくものであり、シンガポール政府と相談することはない」「国家安全保障上の適切な措置と海外からの対米投資の歓迎という二つを均衡させるとの議会の目標を支持する」「テマセク・ホールディングスの投資対象地域は、シンガポールと他アジアが全体の約80%を占める。テマセク・ホールディングスによる欧米等の先進国市場への投資は長期的観点によるものである」「テマセク・ホールディングスが投資した企業の活動に関与することはない」と。


 また同じUAEのドバイ・ワールドのスルタン・アフマド・ビン・スレイマン会長は、欧米での政府系ファンドへの警戒論、規制論には批判的である。同会長は、特にEUが、政府系ファンドが活動内容等を明確にしていない点を批判していることに反発しており、例えば、2月下旬、「一部の人々が政府系ファンドの活動を懸念していることに驚いた」「仮に誰かが欧州や西側への投資を難しくする規則を策定するのであれば、人々はその他の場所に投資することになろう」「政治家に投資を任せれば、投資ファンドは長続きしない」と述べ、ドバイの政府系ファンドは政治とは無関係であることを強調しつつ、欧米が政府系ファンドに投資規制を課せば他地域に投資を移すことを示唆している。

(3月20日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)