ニューヨークのクライスラー・ビルの購入交渉を進めるアブダビ投資評議会(ADIC)
(2008年6月13日掲載)

 2008年6月11日付けのニューヨーク・ポスト紙は、「アブダビ投資評議会(the Abu Dhabi Investment Council、ADIC)がニューヨークのクライスラー・ビルの株式の75%を、アトランタの投資ファンドのドイツに本拠を置く関連会社のTMWと8億ドルで購入する交渉を進めている」と報じた。また本件に通じた消息筋は、アブダビ投資評議会(ADIC)がクライスラー・ビルの隣接地のトライロンズの一部の購入についても交渉中としている。アブダビ投資評議会(ADIC)は昨年(2007年)アブダビ投資庁(the Abu Dhabi Investment Authority、ADIA)を補完する投資機関として設立されたが、中東や湾岸での投資に特化すると言われていた。


 クライスラー・ビルの売却価格とされる8億ドルは7年前の同ビルの評価額の2倍以上であるので、サブプライム・ローン危機にも関わらずニューヨークの商業用不動産の価格が依然堅調であることを示すものと言えそうだ。クライスラー・ビルについては2001年にプルーデンシャル不動産インベスターズの子会社の一つが株式の75%を300万ドルで購入していた。因みに、株式の残る25%はニューヨークのデベロッパーで不動産所有者のチシュマン・スペイヤー(Tishman Speyer)氏が保有してきた。尚、今回のアブダビ投資評議会(ADIC)の取引では、プルーデンシャル不動産インベスターズの保有する株式はすべて売却されることになるものの、チシュマン・スペイヤー(Tishman Speyer)氏の保有分については10%相当は残されることになる模様である。


 77階建てのクライスラー・ビルは、1930年にエッフェル塔を抜いて、人造の建造物としては世界で最も高いものとして建設された。しかし、翌年には同じニューヨークにエンパイア・ステイト・ビルが建設されたことから、その座を1年余りで明け渡している。周知のように、ニューヨークの不動産取引では、2008年5月、マックロウエ不動産が、単一のビルの売却額としては市場最高の28億ドルで取引が成立したとされるGMビルを含むニューヨークの4つの不動産を合計39.5億ドルで、クウェイト投資庁やカタール投資庁を含む投資家に売り渡している。

(6月11日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)