ここに来て再び高まりつつあるイラン核開発の軍事解決オプション

(2008年6月10日掲載)

 2008年6月第一週のイスラエルのハーレツ紙は、イランの核開発を軍事攻撃で解決するとの考え方の台頭を懸念するジョシュカ・フィッシャー前独外相の寄稿を掲載した。フィッシャー前独外相は同寄稿で、「ブッシュ米大統領とオルメルト・イスラエル首相は、イランの核開発計画を、外交手段ではなく軍事手段で解決することを計画しているように見える」「中東は2008年での新たな対決に向け漂流している」「今後数ヶ月での外交的解決がない場合、イランは、危険な軍事紛争が極めて起こりそうなことを理解せねばならない。今こそ真剣な交渉を開始する時である」と説き、イランに柔軟な対応を促した。


 イスラエルのアナリスト達が議論しているのは、2008年11月の米大統領選挙後で2009年1月の米大統領の宣誓式の前の期間での、「イスラエル或いは米国によるイラン攻撃シナリオ」である。しかも親イスラエルのアナリスト達は、軍事攻撃をより可能とするためか、攻撃後のイランの反撃は多くが予想するほど激しいものにはならないとの論陣を張っている。


 事実、以下に見るように、過去10日余りの米国、イスラエルや国際原子力機関(IAEA)の要人の発言は、イランに対する軍事攻撃の可能性を示唆するものが多い。


月 日 発 言 者 内   容
6月4日 エフド・オルメルト・イスラエル首相/米国イスラエル公共委員会(AIPAC)での演説で
対イラン経済制裁は十分ではない。
核武装したイランと対峙するという長期費用は、イランに何かを行うという短期費用を大きく上回る。
国際社会は、イランの核開発の追求は同国に破滅的となることをイランに明らかにする義務と責任を負っている。
6月5日 IAEA定例理事会・議長総括
イランに対し、核開発疑惑に関して一層の協力と自制を要請する。
これに対して、イランのソルタニエIAEA大使は「5年経過しても対イラン核疑惑は消えていない。何故ならば、米国が政治的意図を持って問題化しているのだから」と反論した。
他方、米国は今回の定例理事会で、「イランは時間稼ぎをしており、その間に核兵器開発技術の取得が可能となる」と語り警告を発した。
バラク・オバマ上院銀・民主党大統領候補/米国イスラエル公共委員会(AIPAC)での演説で
自分はイランが核兵器を保持するのを持ちうる全ての力を使って阻止する。
バラク・オバマ上院銀・民主党大統領候補は、同日の演説で、「全ての力」という言葉を意図的に何回も使い、イランに穏健との印象の払拭に努めた。
6月6日 シャウル・モファズ・イスラエル副首相兼運輸相(前国防相、元イスラエル軍参謀総長)/国内紙イディオト・アフロノトで
イランが核開発計画を中止しなければイスラエルが攻撃する。
対イラン経済制裁は有効ではない。
イランの核開発計画を止めるには攻撃以外に選択肢はない。
イランのアハマディネジャド大統領はイスラエルを消し去るといっていたが、その前に自分が消え去ろう。
6月7日 エルバラダイIAEA事務局長/独デル・シュピーゲル誌で
疑惑のある核施設への軍事攻撃は核拡散防止条約(NPT)の権威を弱めることになる。
自分はこうした「歴史的変革」に対して警告を発したい。
核開発競争と核施設の空爆の準備が世界の平和を脅かしている。
我々は多くの疑問を抱いているので、イランの指導層は早急に協力して欲しい。
イランの指導層は、我が国は相対的に短期間で核爆弾を製造できるとのメッセージを送っている。
シリアについても完全なる透明性を求めたい。
出所:各種資料より作成のもの


 因みに、イランのムスタファ・ムハンマド・ナジャール国防相は、2008年6月1日、「イラン軍は、如何に攻撃が大きいものであっても反撃する準備を整えており、必ずや敵に攻撃を仕掛けたことを後悔させる」と語っている。

(6月8日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)