エスカレートするイランとイスラエル、米国の威嚇合戦

(2008年7月15日掲載)

 イスラエル軍によるイラン空爆を想定したとされる軍事演習や、ブッシュ政権がイラン国内での体制不安定化を目指した極秘作戦を展開中との報道を契機に、イランの核開発問題を巡るイランとイスラエル、米国の威嚇合戦が日増しにエスカレートしている。2008年7月9日には、軍事演習中のイラン革命防衛隊が、イスラエルも射程内に収めるミサイル「シハーブ3」を含む9つのミサイルを試射したと発表するまでになっている。以下では、2008年7月8日から7月12日までのイラン、イスラエル、米国等の動きを日付順に整理することとしたい。


【2008年7月8日】

<アハマディネジャド・イラン大統領>:イスラム8カ国サミットの記者会見で
「イラン攻撃はブッシュ大統領にとり自殺行為だ」「弾丸の引き金をひく指はイラン国民により切り取られよう」「米国の賢名な学者達はブッシュ大統領の政治的自殺を許さない」「勿論、経済・政治・軍事情勢もブッシュ大統領の軍事行動を許さない」「ブッシュ大統領は、情勢を自らに都合の良いように変えうる立場にない」「中東そして世界にとり最大の脅威は米国の介入である」「世界中の米軍基地は撤去されるべきである」「米国は宣伝と心理戦に傾注しているが、正義・平和・友情こそ彼らのためになる」「イランは世界に安保と平和をもたらすべく最大限の努力を払っている」「イランの誰であれ核の立場を戻すことはない」「イランは法と正義の枠内で全ての人々に恩恵を与える対話を求めている」「信頼を築くために、米国はイラクから撤退し、イラク国民及び地域諸国の人々に自らの将来を任せるべきである」。

<アリ・シラジ/ハメネイ最高指導者代表>:イラン学生通信ISNAで
「イランは軍事攻撃されればイスラエルを攻撃し、世界中の米国の死活的な権益を焼き払う」「仮に、彼らがそうした愚かな行動に出れば、イスラエルと湾岸の米艦船が最初の標的となり焼き払われるだろう」「イスラエルは米国に(イランを)攻撃するよう圧力をかけている」

<米国第5艦隊の声明>
「湾岸中央部・南部での演習は、地域の石油施設を攻撃から守ることを目的としたものである」「この演習は、イランとの高まりつつある緊張とは関係がない」「連合軍の演習は定期的に行われている」「イスラム過激派が脅威のひとつであるので、彼らによる小船による攻撃もあり得よう」「また自殺爆弾もありえよう」「攻撃を望む人々がいるので、彼らに成功させないように連合軍が湾岸に配備されている」「演習は地域及び世界経済を守るためのものである」


【2008年7月9日】

<フセイン・サラミ・イラン革命防衛隊空軍司令官>:アル・アラム・Ⅳ
「イランは、軍事演習の一環としてイスラエルも攻撃しうるミサイルも含むミサイルの試射を行った」「軍事演習の目的は、イラン国家の一体性を守る用意のあることを示す点にある」「我が軍のミサイルは、いつでも、どこでも早期に正確性を持って発射できる」「敵は誤ちを繰り返してはならない」


<ゴードン・ジョンドロア・米国ホワイトハウス報道官>
「イランの弾道ミサイル開発は、国連安保理決議違反であり、イランが世界に負う責務と完全に矛盾している」「イランの弾道ミサイルが核兵器の運搬手段として使われることを懸念する」

<ウィリアム・バーンズ米国務省次官>
「イランは核開発計画が進んだ段階にあるとの印象を与えようとしている」「しかし、実際の進捗状況は緩やかなものである」

<オルメルト・イスラエル首相の報道官>
「イスラエルは戦争を欲していない」

<バラク・オバマ民主党大統領候補>
「イランは極めて大きな脅威である」

<ジョン・マケイン共和党大統領候補>
「イランに対抗するミサイル防衛システムの確立を支持する」


【2008年7月10日】

<バラク・イスラエル国防相>
「イスラエルは中東の最強国であり、死活的な権益が危険にさらされた場合、行動をいとわないことを過去に示した」「但し、現下の所、国際的な制裁と様々な外交努力に注力している」「これらの努力を最大限払うべきである」

<ライス米国務長官>
「我々は、イランに対して、米国と同盟国の権益を守るとのメッセージを送っている」「米国はイランのイスラエルに対する脅しによって引き下がったりしない」

<マーク・フィットパトリック戦略国際問題研究所/軍事アナリスト>
「イランは試射したミサイルの1基が不成功に終わったのを取りつくろうために、ミサイルの発射の瞬間について発表する写真に手を加えたように見える」


【2008年7月11日】

<ムハンマド・アル・アスカリ・イラク国防省報道官>
「イラク国防省は、イスラエル軍機がイラク領空内で演習を行ったとの報道について全く知らない」
(エルサレム・ポスト紙が、「イスラエル軍の戦闘機がイラク領空で演習を行い、イラン攻撃に備えてイラク国内の西アンバル県の米軍基地に着陸した」との報道に関して言及したもの)

<ブライアン・ホワイトマン米国防省報道官>
「明らかに、誰かが間違った情報を得たか、或いは、誤った情報を流したかの何れかである」


【2008年7月12日】

<モジュダバ・ゾルヌール/ハメネイ最高指導者・革命防衛隊副代表>
「米国は、イランに対する如何に小さな軍事行動でも、イスラエル及び中東の32の米軍基地がイランのミサイルの標的の範囲内であり、破壊されるのを知っている」「今日、敵達は、イランのミサイル攻撃への対抗力を欠いていることを知っている」

<チャールズ・P・ヴィック/グローバル・セキュリティのイラン・ミサイル専門家>
「イランの今回の軍事演習は、新たな軍事力の誇示というよりは、脅し(ブラフ)であり誇張である」

<軍事アナリスト達/在欧米>
「米国やイスラエルのイラン攻撃があるとしても限定空爆であり、全面攻撃ではない」「イランも船舶攻撃や同盟者(注:ヒズボラやハマス、イラク・シーア派勢力等)を使った米国やイスラエルの権益への攻撃といった通常兵器での戦術的反撃となろう」

(7月13日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)