イラクでクーデター計画が発覚し内務省の高官ら35人が逮捕されたと報じたニューヨーク・タイムズ紙
(2008年12月19日掲載)

 詳細については不明だが、米国のニューヨーク・タイムズ紙(電子版)は、2008年12月17日、イラクの治安関係高官の話として、イラク内務省の高官35人が過去3日間で逮捕され、逮捕者の一部は秘かにバース党の再建を計画していたと報じた。逮捕については、イラク内務省のみならず治安警察、マリキ首相府の高官も確認しており、逮捕者の中には4人の将軍も含まれていたという。さらに、これらの高官は、逮捕はマリキ首相に直接報告することとなっているイラクのテロ取締部隊によって行われたと述べている。


 またNYT紙(電子版)は、バース党の再興を目指すアル・アウダ(復帰)という組織に関与する人物が他の高官を巻き込もうと賄賂を渡していたこと及び逮捕に至る襲撃時に巨額の資金が見つかったとのイラク内務省の高官の話を掲載している。同時に、同紙(電子版)は、逮捕者は長期に亘り勤務してきた公務員であり無実で(逮捕者同士は)お互いを知らない。逮捕(の背後)には政治的動機があるとの警察官の話も載せている。


 その上で同紙(電子版)は、ジャワド・カデム・アル・ボラニ内務相が政治的野心を持っており、自らの世俗政党「イラク憲法党」の拡大に努めてきていたことや、イラクの歴史ではクーデターが頻繁に起きてきたことなどを紹介している。他方、就任後には「何もしない首相」と言われていたマリキ首相は、2008年に入るや、バース党排斥法案の施行や地方議会選挙の議会承認、サドル派の弾圧など国内融和や治安の回復に向けた措置を矢継ぎ早に打ち出し「強力な指導者」のイメージの定着にまい進してきた。加えて、2008年初からの原油価格の高騰による石油収入の急増も、発電量の回復などの経済面での好転を生み、イラク内政でのマリキ色は益々強まっていた。しかし、同時に、マリキ首相の政権基盤の強化に反発する勢力が、水面下で同首相降しを画策するなど、米軍の撤退後を睨んだ動きが錯綜しはじめていた。


 今回の逮捕報道が、マリキ政権の転覆を目指す動きを察知した当局による動きであったのか、或いは、マリキ政権が自己の政権の一層の確立のために内務省の反マリキ勢力の駆逐を狙って仕掛けた動きであったのか、今後のマリキ政権及び反マリキ勢力の動向が注目される。

(12月19日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)