イランの核開発を巡る最近の動き(8月2日~8月11日)

(2008年8月19日掲載)

 ジュネーブで開催された欧州連合(EU)とイランとの協議から1ヶ月が経過した。8月に入ってからのイランの対応を見ていると、残すところ5ヶ月強となったブッシュ政権の足元を見透かすように、再度強硬職を滲ます言動が多くなっている。外交解決に重点を移した米国が少なくとも現時点ではイスラエルの対イラン軍事行動を認めておらず、また国連安保理5カ国にドイツを加えた6カ国の足並みが必ずしも揃っていないことがやや姿勢を硬化した背景として指摘できよう。以下では、8月2日から11日の動きについて日を追って振り返ることとし、次回で、8月12日以降の動きを見ることとしたい。


<8月2日>
シュタインマイア独外相が、同国のシュピーゲル誌で、「イランが引き延ばしをすれば、ドイツは制裁によりイランに圧力をかけることにする」と語り、イランに6カ国提案への明確な回答の提出を促した。

バシャール・アサド大統領がテヘランを訪問しアハマディネジャド・イラン大統領と会談した。アハマディネジャド大統領は会談で、「一部諸国がイランとシリアの分断を計画しているがそれは誤りだ」と語った。

イランのアリ・アシュガル・ソルタニエIAEA代表が、米国の核問題でのインドの姿勢を「ダブル・スタンダード」であると批判した。

EU消息筋が「EU27カ国は対イラン国連制裁をさらに進めるとの政治的合意に達した」と語った。


<8月4日>

イランのジャリリ最高安全保障委員会事務局長が、ソラナEU共通外交・安保上級代表と電話会談を行った。同事務局長は電話会談後、「双方は、今後も会談や接触を続ける」と語った。

米国務省報道官が「イランが6カ国提案に返答しないため、6カ国は対イラン新制裁を加えることで合意した」と語った。

国連安保理理事会が対イラン金融制裁の実施の徹底化を求める米英仏3カ国の書簡を安保理メンバー国に配布した。

イランのムハンマド・アリ・ジャファリ革命防衛隊新司令官が、「イランは射程距離300kmの対艦ミサイルの試射に成功した」と語った。


<8月5日>

ソラナEU共通外交・安保上級代表が、イランからの返答書簡の受領を確認した。イランは書簡の中で、「出来る限り早急に明確な回答を行う用意があるものの、疑問点や曖昧な点についての明確な回答を期待する」と述べている。

ガイエゴス米国務省報道官が、「米国はEUから転送されたイランの返答書簡について、6日に6カ国で電話協議する」と語った。

トルコ南部のリゾート地ボソルムで、エルドアン首相が来訪中のバシャール・アサド大統領とイラン問題を含めて協議した。


<8月6日>

ガイエゴス米国務省報道官が、「国連安保理5カ国にドイツを加えた6カ国がイラン書簡に関して高級レベル電話協議を行い、4回目の国連安保理制裁決議に向けて検討することで合意した」と語った。

ロシアのチェルキン駐国連大使が、ガイエゴス米国務省報道官が4回目の国連安保理制裁決議に向けて検討することで合意したと述べていることに関して、「本件では合意も相互理解も協調行動も行われていない」「イランとの交渉の門戸は開かれている」「関係者が依然接触を続けている」と語った。

英国のキム・ハウエルズ副外相が「6カ国は二正面戦略の一環としてさらなる対イラン制裁を検討する以外にないことで合意した」と語った。

米国筋が、ロシアへの警告の意味であるのか、「米国の承認なしにイスラエルがイランを攻撃することはないが、厳格な対イラン制裁がなくなればその限りではない」と語った。


<8月7日>

IAEAのオリ・ハイノネン事務次長が二日間の日程でテヘラン入りし、イランのムハンマド・サイーディ原子力庁副長官、アリ・アシュガル・ソルタニエIAEA代表と会談した。

中東消息筋が「ロシアはイラン向けのS-300地対空ミサイルのバッテリーの搬送を停止しており、近い将来に運び込むことはなさそうだ」と語った。


<8月8日>

アブドゥルラフマン・アル・アッティーヤGCC事務局長が、イランのモハマディ副外相が7月26日に行ったGCC政府の正統性に疑問を投げかける発言に抗議し、「そのような発言は各国間の信頼の醸成の助けにはならず、地域を危険な循環に落とし入れかねない」と発言した。

EUがイランに対して新たな制裁を科すことを決定した。新制裁は、①加盟国による対イラン信用供与の制限、②イラン国内を本拠とする金融機関の活動の監視強化、③イランからの航空・船舶貨物の検査の強化が柱を成す。

イランのバイディ原子力庁事務局次長が「イランとIAEAのオリ・ハイノネン事務次長の会談は前向きであり、話し合いを近々再開する」と語った。

英政府高官は、匿名を条件に、「英国、米国及び同盟国は4回目の国連安保理制裁やEU制裁とは別にエネルギー部門に的を絞った制裁を検討している」と語った。また同高官は、「4回目の国連安保理制裁の検討が10月ないし11月になる」との見通しも明らかにした。


<8月9日>

イラン議会のボルジェルデイ外交・国家安全保障委員会委員長が「EUの新制裁は西側諸国との利益を損なうものである」「イランとEUは経済、貿易などで共通の利益を持つ」と語った。



<8月10日>

イランのゴラム・ホセイン・エルハム報道官が「イランの核開発計画は変わらない」「イランは如何なる状況にも対応しうる」と語った。



<8月11日>

ソラナEU共通外交・安保上級代表とイランのジャリリ最高安全保障委員会事務局長が電話会談を行った。ソラナEU共通外交・安保上級代表筋は「電話会談では何も変わらなかった」「我々は二正面戦略を追及する」「対話のチャネルは開いておく」と語った。

イランのジャリリ最高安全保障委員会事務局長が同国テレビで、「双方は建設的な雰囲気の中で交渉を継続することで合意した」と語った。

(8月18日、記)
<関連情報>

ジュネーブ協議後、落とし所を見極めるべく硬軟両様のシグナルを発するイラン【8/1】

核開発問題ほかを巡り水面下での秘密交渉の進展も囁かれる米国とイラン【7/22】

エスカレートするイランとイスラエル、米国の威嚇合戦【7/15】

安保理5カ国と独が共同の「新見返り案」に予想外に早期に回答したイラン【7/8】

軍事攻撃説を含めいよいよ駆け引きが活発化するイランの核開発を巡る動き【7/4】


(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)